2-4 初めての魔法
座学を終えたジェダイトはミリフィラと森の中に来ていた。魔法を使うためにこの場所に来ているが、彼は弓と矢筒を持ってきていた。不測の事態でも、弓があれば何とかできると彼は考えているためだ。ミリフィラもそれを止めようとはしない。森の中は常に危険が伴う。街の近くであれば、強力な魔獣はほとんど出てこない。だが、油断していい場所ではない。
「じゃ、魔法の練習を始めましょう」
彼は座学で教えられたことを頭に浮かべていた。
「座学で教えたことは、魔法を使うときはあまり考えなくていいわ。そうね、まずは水か、土を出してみましょう」
彼は水をイメージしてみたが、水は出現しない。土も同様だった。
「魔法は、発動、過程、結果。この三つのイメージを持たないとうまく発動しないわ。例えば、水が生まれる、その場に留まる、消失する。こういう風に、イメージしないとダメなのよ」
そのアドバイスを受けて、彼は言われたとおりに魔法をイメージする。すると、彼の前に、水が出現し、その場から動かずに留まり、消えた。イメージ通りだ。
「あら、飲み込みが早いわ。言われてすぐに使えるようになるなんて」
褒められて多少照れるジェダイトだが、イメージという点では弓術にも通じるところがある。矢が当たるイメージがなければ、矢は当たらないのだ。そう言ったところでミリフィラの言っていることがすぐに理解できたのだろう。
彼は続けて、土も同じようにした。そのあとに、風、そして、火。どの魔法もこの程度なら使用できた。
「魔法の才能があるかもしれないわ。座学の時は言わなかったけど、魔気とは相性というものがあるの。例えば、火をうまく使えたら、土はうまく使えないとか。法則はないのだけれど。そういうのがあるからジェダイト先生みたいにすぐに四属性を出現させるのは才能かもしれないわ」
彼女の言う通り、ジェダイトの魔法の適性は、悪くはない。だが、全ての属性の相性がバランスよく良いというだけ、強力な魔法を使うには全ての属性の相性が悪いということになる。生活は便利になるだろうが、戦闘においては魔法が決め手になることはないだろう。
その後、ジェダイトは属性のかけ合わせを教えてもらった。それは、例えば、水の球に回転をかけて推進力を高め、魔法の速度を上げるために風の魔気を混ぜることでそれが実現するというような、一つの属性を使うよりは高度な操作になる魔気の使い方だった。
「では、実戦。あの木に向けて、撃ってみて」
彼はイメージする。彼の中で射撃と言えば、弓矢だった。水でできた矢がイメージされ、それを遠くに飛ばすために矢に追い風を吹かせる。そのイメージが現実へと干渉する。彼の前に三本の矢が生成され、そこに風が吹く。その風が矢を押しているのか、止まっていた矢が急に速度を出して前に進む。そして、矢は木に直撃して、消えた。木にダメージが入っているようには見えないが、実際には木に流れる魔気が消費されているのだ。
物理的に干渉しないとはそういうことだった。魔法を受けても痛みがない。続けて食らえば、体内の魔気が消費され続ける。ある程度、消費されると衰弱が始まり、体内の魔気が無くなれば、死ぬ。魔法はそういう性質のものだ。
「おお、やっぱり才能あるんじゃない? 初めてでここまでできる生徒は中々いないわ」
褒められると嬉しい反面、やはり、少し照れてしまう。ジェダイトは感謝されることはあれど、こうして、素直に褒められることはあまりない。そのため、嬉しそうな声で、作った風もない彼女の声にどうしても照れてしまうのだ。ミリフィラはミリフィラで自分が教えた結果ここまですぐに成長を見せてくれる生徒がいることが嬉しいため、喜びが抑えられないなかった。
こうして、初心者用の講義は終わり、学園に戻った。
「ミリフィラ先生。今日はありがとうございました。これで狩りも楽になりそうです」
「貴方は結構、覚えが良いのでまだまだ教えたいくらいよ。何か知りたくなったらいつでも言ってちょうだいね」
「ありがとうございます。また、宜しくお願いしますね」
話もそこそこに二人は別れた。
――付近で超能力が使用されました。使用者は不明です。
学園の廊下を歩いていると、いきなり超能力が知らせてきた。周りに超能力を使っているような仕草の人はいない。操作に必要な動作がない者もいるが、使用者が特定できないというのは変な話だ。例えば、百人いる中で二十人全員の超能力の使用者を当てるもの、彼の無意識の情報収集能力と超能力があれば、できることなのだ。だからこそ、使用者が不明と言うのはあまりあることではなかった。二、三年に一回あるかないかと言ったような確率のものだ。それにこの学園で、と言うのも何か思わせる原因なのかもしれない。
何にしろ、警戒しておいて損はないだろう、と彼は考えて、一応、このことを頭の片隅に留めた置いた。
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