君は、ひどい人だ。
俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き
君は、ひどい人だ。
君は、ひどい人だ。
俺は彼女の映った写真を見てつぶやいた――――
彼女との出会いはちょうど30年前だった。
ひまわりの咲き誇る花畑で、俺が君に一目惚れして、猛アタックしたんだよな。
なんとか連絡先を掴んで、その一週間後に初めてデートをした。
行ったのは確か、映画だっけ。
無名監督の作品で時間が飛び飛びでうーんって感じの出来だったけど、君と一緒だったからものすごく楽しい記憶しかないよ。
その後何回かデートしたよね。
夏の終りには夏祭りにも行って。
君はりんご飴を落として泣いていたっけ。
そんな君が愛おしくて、俺はとても楽しかったよ。
花火を見ているときに、俺が告白したんだったよね。
『愛している。付き合ってほしい。』
そんな不器用な言葉でしか伝えられなかったけど、仕方がないじゃないか。
愛しているんだもの。
君は笑いながら、『もちろん。』って俺に抱きついたよね。
あのときの体温は未だに忘れられないよ。
本当に楽しかった。
その後はお互い仕事が忙しくて、月に1回会って他愛のない話をするような関係だったよね。
俺がそんな関係に耐えきれなくて、その年のクリスマスに求婚したんだ。
あの日は雪の降る日だった。
君はやっぱり笑いながら、『もちろんっ!!!』って俺にキスしてくれたよね。
キスは何回もしてたけど、あのときのやつは忘れられないよ。
今もほら、唇を触れば君の感触ばかり思い出される。
結婚も早かったっけ。
その年のお正月に君の両親に挨拶に行って。
俺は反対されるとすんごい緊張してたけど、ご両親は優しい人で笑って受け入れてくれたんだ。
君はほらねって笑ってたけど、君とお義母さんが寝たあと、お義父さんにお酒に誘われたときに。
『君は娘をどれだけ愛しているんだ』ってすんごい真剣な顔で言われたんだよ。
俺はさ、まだ若かったからテンパっちゃったけど、確か君の好きなところを百個言えますって言って。
実際に君のお父さんに君の良さを百個言うなんてことをしたんだ。
お義父さんは俺が百個言い切ったところで、俺の肩を掴んで。
『素晴らしい。けどな、俺のほうがいっぱい言えるな。』
って、笑ったんだ。
俺はそのとき、やっぱり君のお父さんだって謎に安心したよ。
それからは本当に一瞬だったよね。
東京から少し離れたところに家を買って、二人で住んで。
一年も立たずに子供が生まれてさ。
二人ほしいなんて言ってたけど、結果四人も授かったよね。
しかも末っ子たちは双子だよ。
俺は彼らが生まれた時、すんごいびっくりしたんだよ。
子どもたちを育てるのはとても大変そうだったよね。
俺は見てることしかできなくて、君に怒られたっけ。
けど、そんな子どもたちも皆成人したよ。
長女なんて、今はもう三児の母だよ。
いいお婿さん見つけて、本当に幸せそうだ。
皆がいなくなって再び二人になったから、家は売ってアパートに移ったよね。
最初は狭いって思ったけど、一年もしたら半分くらい持て余したっけ。
子どもたちのいない生活は少しさみしかったけど、二人っきりは落ち着いていて俺はそれも好きだったよ。
ちょうど今日から一年前だ。
君がドライブしたいって言うから、俺は久しぶりに張り切って運転したんだ。
海に行きたいって二人で言って、海岸線を走ったよね。
海の風が気持ちよかったよ。
目的地の海浜公園まであと数キロってところで、向こう側からトラックが来てさ。
普通にすれ違うかと思ったら、急にハンドルをきって。
気がついたら君はいなくなっていた。
本当に、君は、ひどい人だ。
俺を残していくなんて。
ねぇ、どうしたらいいんだ。
今でもこんなに俺は君を愛しているのにさ。
この怖いくらいの愛情は、どこにやればいいんだ。
ねぇ、教えてよ。
笑ってくれよ。
いつものような。
ひまわりのような顔で、俺を見てくれよ。
俺はもう、泣きつかれたよ。
君のあとを追いたかったけどさ、息子や娘がとめるんだ。
お父さんまでいかないでって。
本当にいい子たちだよね。
俺を軟禁してまで、自殺させないなんて。
本当に俺にはもったいないくらいにできた子たちだ。
多分君の遺伝子のおかげだよね。
あぁ、本当に。君は、ひどい人だよ。
――――俺は今でも君を、死にたいくらいに愛しているのにさ
君は、ひどい人だ。 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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