ハウツー・ラヴ
青海月
×××
ずっと大好きだったキミを、やっと手に入れることが出来た。出逢ってから十年以上、ここまでとても長かった。
成長すると共にどんどん綺麗になっていくキミを間近で見ていて、他の誰かに奪われるんじゃないか?と不安になることもあった。キミが友達を増やしたり行動範囲を広げたりする度に焦ったりもした。
でも僕には「幼馴染みだからこそ」の自負があった。キミのことは何でも知っていたし、完璧な計画をしっかりと練ることが出来た。だからこうして今キミは、僕のすぐ傍にいるんだよ……。
あれ、どうして泣いてるのかな……あっ、分かった!嬉しすぎて感動してるんだね?!
そうだよ、僕は僕自身の全てを懸けて必ずキミを幸せにしてみせるんだ。だからキミは何もしなくていいし、考えなくていい。僕に全てを委ねるだけ……ね、まさに至れり尽くせりでしょ?最高だと思わない?
◇
今日も今日とておうちデート。キミは何処かに出掛けたそうにしてるけど、そんなのダメに決まってるよ。事故に巻き込まれるかもしれないし、悪い奴に襲われる可能性だってある。
過保護?心配性?キミがあまりにも魅力的だから、自然とそうなっちゃうんだよ。それに僕は十年以上ずーっと我慢して我慢して、ようやくキミのカレシになれたんだ。手放すのも奪われるのも絶対にイヤだから、嫌でもこうなっちゃうんだよ。
実際、三年前の夏休みに同級生と池袋にお買い物に行った時だって、駅前でなんかヤバそうな奴にナンパされてたよね?
え?何でそんなこと知ってるのかって……前にも言った通り、僕はキミのことは何でも知ってるんだよ。だからこれくらい、知ってて当然なんだってば。
……とにかく外は危ないから、絶対に出ちゃダメ。その代わり僕が何でもするから、この部屋の中で満足してね。
◇
なんだか最近、顔色が悪いね?それに全然動かなくなっちゃって……。でも大丈夫、僕が看病するから。もし治らなくても、ちゃんと面倒見るから安心してね。食事も、掃除も、洗濯も、アレも、コレも、ソレも……キミの為なら何だって余裕だよ。
それにしても、キミはズルいなぁ。そんな姿になっても可愛いなんて。
――だけど少しだけ日常に飽きてきてしまっていたある日、ふと思い付いたんだ。
キミと、僕が、ひとつになれば……
キミが、僕の、一部になってくれれば……
そうすれば、ずっと一緒に居られるじゃないか。絶対に安全じゃないか。それってつまり、永遠に幸せじゃないか!
あぁ、これは名案だ。どうしてもっと早く思い付かなかったんだろう?とにかくこれは今すぐにでも実行しなきゃ。そうと決まれば早速準備だ。
キミならどんな調理でもどんな味付けでも、きっと似合うに決まってる。全身まるごと余すことなく、美味しく食べられるに違いない。
さあ ひとつに なろう。 シアワセに なろう。
そのために …… い た だ き ま す 。
ハウツー・ラヴ 青海月 @noon_moon
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