明るい曇り空の下で
みどりに呼び出されたのは、2月半ばのことだった。審査会ののち、展示会があるといっていた。その年みどりは文学部から製作品としてグラフィック科で展示に参加することを許されていた。それは刈安やあおの
「
みどりからのメールにはそう
あおはみどりからもらった
返答としては
「油絵のような高価な材料の質までは出せないが、それなりの
みどりは
相模原から恵比寿までは電車を数本乗り換えなければならない。ゲラをクリアファイルに入れてさらに書類用のケースに仕舞い、リュックに詰めて運ぶことにした。二月も半ば、真冬ほど寒さは感じられなくなっていた。
駅から北側の出口へ出て、少し西へ向かうと、公園のような広場に出る。周りには大きめのビルがある。ビルの周りにはいくつものカフェテリアがあって、まだお昼前だが、椅子やパラソルを店員が外に並べ始めていた。朝は雨が降ったのか、地面は湿っている。ただ雨量はさほどでもなかったのか水たまりができるほどではなかったみたいだ。公園の中央の植え込みの近くにあるベンチあたりで待ち合わせとみどりはメールをよこしたが、時間になってもみどりは現れなかった。
メールを送ると
「すみません。もうしばらく待て居てください。イベントの最中なのと、先生とまだ話が合って――」
と返ってきた。
彼は適当な返事をしたところで暇になったので、電車の中でも読んでいたモホリ・ナジのデザイン書を持ち出した。あおの最近の
天気は昼にかけて
そのうち少しパラパラとまた雨が降ってきた。慌ててあおは本を仕舞い、仕方なしにビルの中へ行き、ホール内のカフェテリアでカフェ・オレとサンドイッチを一つ注文した。雨は
待ち合わせのベンチへ向かうとみどりがいた。
「すみません。やっとぬけだせたので――」
「いいよ、だいじょうぶ。そんなに待ってはいないから」
風が彼女の
「久しぶりですね」
みどりは明るかった。服装は大学にいる時と同じである。あおは少しホッとしたような、期待を外されたような何とも言えない気持ちになった。
――何を期待していたんだろうか。
と、思っていると、
「どうかしましたか?」
みどりがすかさず声をかけてきた。
「いや、――今日はこの後も展示会?」
「そうなんです」
「たいへんだね」
みどりは寒そうに足をばたばたさせていった。
「多分この後、教授たちも
「そっか――」
あおはやはり少しこの後みどりとどこかへ行けるのではないかと期待していた。みどりも少し残念そうな顔をしている。
二人はベンチへ並んで座った。風が少し強めに
「
「だいじょうぶです。――あおさんはだいじょうぶですか?」
「少し
「何か食べなくていいの?」
「たぶん、打ち上げでたくさん食べられると思うので――」
「あ、そうだね」
「あ、たべていいですよ? せっかく買ったんだし――」
「そう? ――ごめん。すぐには来れないかと思って自分の分しか買ってなかった」
「だいじょうぶです」
みどりの会話には
「それじゃあこれ、ゲラ」
「ありがとうございます」
横に座っているみどりに、リュックから取り出した数枚のゲラを渡すと、みどりはそれらを見比べ始めた。相変わらず風は強く吹いている。
「――カフェいかない? 風強いし、お茶おごるよ?」
「すみません。そうですね――。気を
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