山の景色も黒々と霞んで
師走に入った。次々と原稿が仕上がった。間に合いそうにないものが数点あったが、再度期日を決めて内々に最終締切を決めた。
あおは校正を始めていた。掲載ルールを決めて、全て形式を統一させることにした。句読点や括弧の扱い、記号になどついて。
それから毎週の文学ゼミへあおは顔を出した。制作品の掲載順や作風、それから人となりを見ながら、文章に読み耽った。わからない表現や、てにをはの繋がらないところや重複、言い回しなど、作者に変更が必要であれば伝えて、文章や言い回しを換えてもらうこともあった。ひと作品に手をかけながら読み切るのに3日位かかり、同じ作業を3回繰り返すつもりだった。そうこうしているうちに、間に合わなかったぶんの作品や、挿絵、表紙、あとがきや奥付、文芸誌のタイトルなどがあがってくるはずであった。
文学部棟を出ると相模原と武蔵野の大地が一望できた。都心から離れた山奥のキャンパスである。冬にさしかかるこの頃の景色は陽光をあまり浴びないためかモノクロの世界だった。色は殆ど失われ、山水絵巻のようなパノラマがあおの目の前にある。それはいまの彼にとって安らかな場所だっただろう。雑念も何も引き起こさない無の世界に親しいところであった。
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