都会の虚空の中を

 話が一通り済むと、あおは東雲に原画のスキャニングの承諾を貰って、みどりにそのデータを送るように願い出た。台割どおりに挿絵の箇所を伝え、原稿データを渡して一通り中身を読んだ上で挿絵を描いてほしいことを伝えた。

 2時間ほどだろうか、かなりの時間話しているようだった。昼過ぎくらいに待ち合わせたが、もう空は暮れ始めている。

「煤竹くんはこのあとどうするの?」

 東雲が聞くので、友達の展示会で5時過ぎから打ち上げするというのでそちらへ合流すると話した。

 あおはみどりに「くる?」とだけ訪ねてみたが、もう帰りますというので、それ以上は何も聞かなかった。

 みどりのこれらの態度を見てあおは思った。

 ーーうぶなんだ、と。


 椿屋から出て、「じゃあ行くから――」とみどりへいうと、みどりは脇の下あたりで手を振っていた。そしてすぐに分かれた。あおはまた街中を歩くと、周りのものには目もくれず、ひたすら淀んだ曇り空を見上げて、駅の方の道へと歩みを進めた。

 みどりはそのあとどうしていただろうか。

 原稿の仕上がりは師走に入る頃としている。これから校正作業に入る。一番忙しい時期になる。

 

 

 

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