もえぎ色になる季節まで

 短尺たんざくもみじというのは教授のペンネームだが、もみじ氏は文学賞をいくつか受賞している。文壇ぶんだんではもうだいぶんフル物であるが、英文を和訳したものも多く、あおもパンクのロッカーのエッセイ集をもみじ教授訳のもので読んだことがあった。老齢という割に体の動きがいい見た目も軽く、体はそんなに大きくはないが健康そうな容姿をした教授であった。

藍鼠あいねずさんから聞いてるよ」と教授はすぐにあおをゼミ内の学生へ紹介した。

「君が来たからね、今日から私の研究室へ学生を集めようと思うんだ」

 もみじ氏は快かった。メーリングリストにあった十数名の学生もこの日は全員ゼミへ来てくれていて、この日文芸誌作成のためのヒアリングをしっかり行うことができた。

 小説は15作であとは絵本が1作、評論が3作、会談の記録が2つとそのようなくらいである。

 もみじ氏はあおに特になにか言うこともなかったらしいが、自身が企画するゼミの文芸誌が無事に発行できそうなところを見ると、どこかしらホッとする感慨かんがいを持ったらしかった。

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