熱のこもる室内と静けさ

「僕の研究のためでもあるんだけど、今回は表紙に木の板を使ってみたいんだけどな。ほら君のゼミの文芸誌の発行は今回年度末だろう?――ちょっと枯れ気味の木の感じを出して、季節感があると思わない? まあ、これは提案ていあんなんだけどね」

「面白いです。先輩装丁そうていの研究されているんですか?」

 ――再びみどりは語尾を強めに言った。その好奇心と目の輝きは、あおが4回生の時の研究発表会に見た刈安のその目と似ていた。そしてなぜかあおは心躍こころおど感慨かんがいおそわれて照れ臭くなった。あおは携帯のフォルダーを開いてみどりにみせた。

「これ、卒論の時に製作品として提出したものなんだ」

「あ、刈安さんと一緒にうつってる――。ってすごいですねこれ、彫刻ですか?」

 みどりはまだ思わず口に手を当てて驚いていた。

「いや、あ、まあそうなんだけど、彫刻研究室に知り合いがいて、鋳物いものなんだけど、制作してくれたんだ。デザインのスケッチは僕で作ってね、――それよりこっちの装丁そうていがメインで、中身は装丁そうていデザインの多様性について論を展開したんだけどね――。」

 みどりの驚きを見ながらあおも驚いていた。あおは刈安に言われてみどりとは一度話したきりで自分がどんなことをしているか話したことなかったことを思い出していた。

「へえ――」

 みどりはさらに興味を持ったので、携帯の画像を数枚スライドさせて目を見開いたりしてから、装丁そうていデザインについてあおが持っていた文献ぶんけんに目を通しはじめた。

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