不穏な雲行きと夜景の中を

 すべて自分でやらないにしても、デザイン案をになうということは全体を形作っていかなければいけない。ことによってはさらなる改編かいへんを重ねなければならない訳であるから、誰よりこの文芸誌に密着して作業を重ねなければならない。杜若かきつばたにそれが分かるのだろうか? 

「やってもいい」

 一番信用できない言葉だ。こんな口約束なら、じゃあやらなくてもいいと放棄ほうきできる訳だ。はっきりしない嫌な答えをそのまま受け入れられるだろうか――。あおは考えた。しかしいくら考えてもやってもいいということは途中で逃げますと宣言せんげんされている気がする。そう思うと非常に不愉快ふゆかいになった。そんな人間はらない。しかしながらみんなもう大学生だ。責任の取り方も見てみたい気がする。彼女はどうするだろう? 自分が責任を負わなければならないことに関して、「やってもいい」それは、責任は負えませんと言いたげだ。「やります」ではないのだ。あおは確信をもって彼女は逃げるだろうと思った。

 もう夜遅かった。色々考えているうちにあっという間に日が落ちたのだ。帰宅する道の縁石えんせきに気づかずあおはみどりのメールを見ながらさっきのことを考え、突然歩みをはずしていた。遠い夜景の景色が縦方向に回転して瞬時に肩で受け身をとっり、そのままでんぐり返りをするように車道へと転がり降りた。

 驚いてすぐに周りを見たがどうやら車は来ないらしく、あおはかれずにすんだ。

 体をお越しホコリを払うと嫌な予感がよぎったがまたすぐにもとの考え事へと戻った。

 刈安も信用して彼女を使ってみることにしたはずだ、あおはしばらく杜若かきつばたの出かたを待つことにした。

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