クーラーのきいた図書館の中で

 彼女とあって、企画の大まかなスケジュールを決めた話を刈安に報告すると、わかったとだけメールが来た。

 数日後、刈安からは図書館に集まるように言われた。みどりもその日図書館に来ていた。

 高い金を払って入学しただけのことはある。空調のよく効く学内の図書館は、居心地が良かった。学部生のころ、よく図書館に引きこもって文献を読みあさった記憶が蘇る。高い本棚と購読のスペースが心地よかった。しかし彼にとってこの贅沢な感じはその身の丈と合わぬ気がして、時折ここに今いるということが怖くなることもあった。

「とりあえず、これ」

 あおは刈安にもらったメンバーの連絡先をメーリングリストに登録して、招待メールを発信した。それから全体に制作の意図を送ってもらえるように願い出た。

「あお、返事が来たら、俺と藍鼠あいねずくんに転送してーー」

 あおはその返信を刈安に言われたとおり二人ヘ転送し、刈安は持ち込まれる文章と制作意図をひたすら照らし合わせて読み説く作業をした。学芸員志望の刈安は文書とその文章のイメージする写真や画像を持ち寄り、コレは駄目だめだとか、こうしたらどうだとかそんなのを毎週一回、ゼミ内会議の上で話しているのだという。持ち込まれた制作物と文章、そして持ち込んだその人がその意見を聞きながら改編に改編を重ねて、持ち込まれた文章は段々と充実した。無論むろん刈安の独善という訳ではない。作家もだいたいはじめは意気高揚いきこうようとした顔で自分の文章の解説に入る。そのまま刈安を説き伏せられたらそれでいい。しかし学部生時代、久しぶりの秀才と言われていた刈安にとって、惰性だせいでやってきた学部連中の意見などへでもないのかもしれないが……。

 持ち込まれる制作品について刈安は同時に持ち寄られたイメージ画像をあおとみどり渡し、その大きさと掲載けいさい形態けいたいだけを伝える。それから後のことは任せたという。そのためにあおもみどりも機械的に作業をすすめられた。

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