下 へんてこなことばといなくていいひと
「え」「わたしは良いこと悪いことぜんぶぜんぶごちゃまぜにして都合良く書き換えたものとしか。だからさ、えーそんなに気にしなくていいんだよきっと」
再び沈黙が回る。さっきより少し早くなった気がする。
「だってさほら、ね?どーせみんな死ねば忘れちゃうんだから」
少女がよいしょと言って座ってるわたしの前に立つ。笑顔はなくて絶望しかない顔。年相応の可愛らしさなんてもうどこにもありませんでした。
「お姉さんもそんな無責任なこと言うんだ?じゃ死んでよ」
少女はわたしの首を絞める。
あまりに年に不相応な力で一気に意識が飛びかける中、絶望てか狂気に満ちた顔の隙間から言葉が溢れるのが聞こえました。
「わたしは今忘れて欲しいの記憶の底から」「そんなこと出来るわけないよ」「なら
無理矢理意識と言葉を繋ぐ。
「安心してよ。わたしは君みたいなジコチューな奴ちゃんと忘れてあげるから」
少女の顔の隙間から「へ」と乾いた音が漏れる。少しだけ力が弱まりました。
呼吸を整えてから笑う。虚勢だけど。
「記憶の棚の隅にも残さない約束するよ。君の事を忘れないなんて言う気ないしてか多分ここ出れたらもう顔も声もそんなに覚えてないよ。うんそうだ、通行人みたいなもんかな」
「通行人?」「そ」 「たまたまわたしが歩いてた道にたまたま君がすれ違っただけ。出会いなんて特別でもなし」
今回はかなり変わってるとは言わないけど。
「お姉さんが忘れてもみんな覚えてたらなんの意味もないじゃん」
「そりゃそうよ他のみんなはしばらくは覚えてるよきっと。レイプされた同級生がいたって、そんな噂がそれなりに流れると思うよたぶん高校ぐらいまでは。でもそんな子もいつか働き始めて子育てするかもしれないねそんな時に君なんて浮かびやしないよ思い出したとしてもそれもどうせ思い出の中ので都合よく改造された君で本当の君じゃないしさっきも言ったけどどーせ死んで忘れるし」
「うそつき!」
今度は顔をめちゃくちゃに殴ってくる。さっきも思ったけどへんてこな世界だからか力がヤバい。口の中血だらけだしなんか歯もグラグラしてきた気がする。
だけど、止まる訳にはいかない。
「嘘じゃないよ通り道にいるボランティアおじさんの顔なんて今もそんな思い出せないし卒業したらすぐ忘れるでしょ?そんなもんよ君の価値も大丈夫英雄譚の主人公にもハリウッドスターにもなれないし、その辺にいるただのいなくていいひとなんだから」
「ただのいなくていいひと?」
「みんな悲劇のヒロイン演じたがるんだしいてもいなくてもそんなに変わんないよ」
少女の手にもう力は入ってなくて震えてる。
「ねぇ本当に忘れてくれるのこんなぐちゃぐちゃなわたしをいないことにしてくれるのひとりぼっちでいても許してくれるのいなくていいひとでいてもいいの?」
「そりゃ時間はかかるよわたしは都合の良い君すら思い出せないと思うけど。縁や出会いが大事なのはもちろん。でも全部拾ってる暇なんかないよ」
わたしは震えてる少女を抱きしめる。
「だってかえりみちよりもずっと生きていくいきみちは長いんだから」
「ふーん」
と言ってわたしを蹴ってきました。
痛いなぁと思ってたら突然泣き始めました。
鼻噛むか聞くと頷くからポケットティシューをシャパッと取って一枚渡す。
ちーんという音と泣き声が回転を終えた真っ暗な世界に響き渡りました。
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