第12話不思議な味の唐揚げ。
「不思議ちゃんか、奇遇だな」
昨日とは違い今日はおたまじゃくしの服。上から目線にしてはセンスが子供だ。見た目もだが。
「貴様とこんなところで合うなんてな。これもまた運命」
「なんの絵本を見たらそんな言葉が出てくるんだ?」
「お前は私を子供扱いしているのか?」
いや、実際子供だろ。
そう思いつつ、そんな事を言ったら今強く握られている拳が俺に強烈なパンチを喰らわせてきそうだったのでこらえた。
「お前は家族と一緒に来たのか?」
「話を逸らすか。まあいい。今日は家族はおらん」
「じゃ、遠足か何かか?」
「それでもない。誰にも知られていない抜け穴から入った」
この子供怖い。
「てか、それって犯罪だろ? 帰った方がいいんじゃね?」
「保護者ならお前がいるし大丈夫だろ」
「保護者とかの問題じゃな――」
「さーいこー!」
俺の言葉を最後まで聞かず手を掴みどこかへと連れて行く。
「待てって! 俺は今日妹と来てるんだ!」
「そうか。じゃ、妹ちゃんの所に行くか」
「は!?」
不思議ちゃんはまるで琴美の居場所を知っていたかのようにあっという間に琴美のいる場所に到着した。
「あ! おにい……え!? 誰その子!」
「え、あの…その……」
なんて説明したらいいんだ!
俺の彼女は見た目的に俺がロリコン扱いを受けるし、子どもはいつ誰とヤったんだってなるし、従兄弟はすぐバレる。どうしたら――
「こんにちはお姉ちゃん! 今私のお父さんをお兄ちゃんと探してるの!」
「あ、そうなんだ。びっくりしたー」
琴美は安堵したが、俺は不思議ちゃんのその変わりように驚いていた。
「じゃ、お父さん探しに行こうか」
琴美はしゃがんで優しくほほえんだ。
「でも、その前に観覧車乗りたい! お父さんも上から見つけられるかもしれないし」
「そうだね。お兄ちゃんもそれでいい?」
「ああ。見つかるかはわからんがな」
「決まり!」
不思議ちゃんはそう言うと俺と琴美の手を引き観覧車まで引っ張って行った。
「たかーい!」
観覧車が頂上まで来た時の不思議ちゃんの笑顔は無邪気な普通の子供だった。
「なんか、こうしてると家族みたいに思えてくるな」
「確かに! まるで私とお兄ちゃんの子供が不思議ちゃんみたいだね。あ。でも、不思議ちゃんのこの目つき、鶴味さんに似てる!」
「……」
鶴味か、今は思い出したくなかったな……。
「この髪質はお兄ちゃん似だね。あと――」
「あ! いた!」
琴美の言葉を遮るように不思議ちゃんはそう叫んだ。
そして観覧車が一周し終わるのと同時に不思議ちゃんは急いで手を振りながらどこかに向かって走り途中「ありがとー」と言って人混みの中に姿を消した。
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