第11話二度揚げした唐揚げ。
「ただいまー」
結局俺は学校には行かず、ゲームセンターや喫茶店で時間を潰しそのまま家に帰ってきた。
「お兄ちゃんお帰りー」
「琴美……」
俺は琴美の顔を見た瞬間に今朝の鶴味の告白を思い出し下を向く。
「何かあった?」
「あ、いや……別に何も」
俺の動揺を見て琴美は少し気になったのだろう。俺の事をじっと見つめる。
「何かあったんでしょ」
「な、ないよ」
この間琴美に安心しろとか言ってこのザマか。
俺は心のなかで自分の弱さに呆れた。
「お兄ちゃん」
琴美は通り過ぎる俺の腕を掴み、引き止めた。
「明日何か用事ある?」
明日は土曜日。特に用事は無いので、俺は「無いよ」と一言言った。
「じゃ、私とどこか行かない? 最近暗い話ばっかしててどこにも行けてないしさ」
多分、琴美は俺の事を心配してくれているのだろう。確かに最近は暗い話ばかりで、二人で何かをしたりはしていなかったし、気分転換にはいいかもな。
「ああ。どこに行きたい?」
「遊園地!」
琴美は明るい笑顔で答えた。
そして翌日「開園と同時に入りたい!」と琴美が言ったので俺は朝早くに起き、琴美を起こした。琴美はいつもより目覚めがよく、すぐに出かける準備をした。
「お兄ちゃん早くー」
「はいはい」
遊園地の目の前までやってくると、琴美は俺の前をうずうずしながら走っていった。
その無邪気な姿はとても可愛かった。
「お兄ちゃん! 最初はジェットコースターに乗ろう!」
「いや俺は――」
琴美は俺の有無を聞くこと無く手を引っ張る。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「いや、死んじゃう……」
ジェットコースターってこんなにキツかったっけ……。
「トイレ行ってくる」
俺は気分が悪くなり、トイレに直行してしまう。
「何を醜い姿を晒しているんだ」
トイレに入る直前に、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。
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