1992年5月4日(月曜)多笑、悪童に出会う。 

「やかましいわい、弥太郎。

ちょっと今日は王遊(オウユウ)で馬鹿勝ちしたからゆうて、調子乗り腐って」

暴馬が弥太郎を軽く押す。

王遊とは西神山手地下鉄長田駅からすぐの場所にあるパチンコ店だ。


「ウマちゃんぼろぼろやったもんな」

弥太郎がニヤリと笑った。


「ちゃうねん」

暴馬が鼻息荒く、言い返す。

「王遊のブラボーキングダム、釘締まり過ぎやねん。

あっこはやらしい釘師使(ツコ)うてけつかんねん。

営利至上主義や。

いたいけな中坊の小遣い根こそぎイテもうて、ホンマにエグいわ」


「それにしてもあれやな」

青坊主スリーの1人、高井陽介が近づいてきて、言った。

高井陽介は身長160センチくらいで垂れ目、口角がこれ以上無いくらいに上がり、いつも笑っているような顔で、コメディアン然とした風貌をしている。

「相変わらず見事やな、ビックリ箱」

と続けて、陽介は目を輝かせた。


「陽介はウマちゃんのビックリ箱大好きやもんな」

弥太郎が頭を振って、言う。

ビックリ箱とは阿藤暴馬の必殺技、いつ飛んでくるかわからない、ノーモーションのパチキ(頭突き)の事だと多笑は後に知った。

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