1992年5月4日(月曜)多笑、悪童に出会う。 

 多笑は後ろ手で調理台にある包丁の柄を掴んだ。

これ以上、こいつらが店を荒らすような事したら、刺し殺してやる。死んだ翔平との夢だったこの店。荒らす奴は許さない。

死んでもこの店は守る。


「われ、うん言わんかい! この腐れオメコ!」

眉無しががなり立てる。


 怒りが臨界点を突破しそうになった所で、眉無しの後ろに誰かが立っている事に気づいた。奥の座敷に居た青坊主スリーの1人、阿藤暴馬だ。


「なぁなぁオッチャン」

阿藤暴馬が眉無しの肩を叩いた。


「あぁ」と眉無しが首を背後に巡らせると同時だった。

暴馬が会釈程度、頭を振った。

眉無しが鼻から血を噴き、後ろのめりに倒れ込んだ。

えっ!? 何が起きたん!?

阿藤暴馬が右手で自らのオデコを撫でて、

「いったぁ、ミスってもぉた。歯ぁに当たったがな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る