第157話話

「あはは!やっぱりミラはいいね…」


ファイ王子は何故か嬉しそうに笑っている。


そんな様子に私は首を傾げた。


「何が楽しいんですか?」


「いや、私にそんな口を聞く人はなかなかいないからね…新鮮でいいもんだな」


王子の言葉を聞いてある考えが浮かぶ。


「王子…まさか…」


私は王子を見て眉をひそめた。


「ん?なんだい?」


「まさか…友達いないんですか?」


「ぶっ!」


イーサン様が後ろで吹き出した。


「す、すみません…」


一生懸命笑わないように拳を握り顔を背けて震えている…そんなに笑う?


「何かな?イーサン…何か言いたい事があるならはっきり言ってくれていいよ?」


王子がイーサン様を睨んだ。


「い、いえ…」


「だっていつも一人で来るし…そっか…」


私はちょいちょいとファイ王子に手招きすると


「何?」


王子がじっとこちらを見下ろす。


私は王子の腕をクイッと引っ張ると耳元で囁く…


「しょうがないから私が友達になってあげます…でもバレちゃうと怒られるから内緒ね」


「はっ?」


「ね!」


驚いている王子にニカッと笑いかける。


王子はフッと肩の力か抜けた。


「ふふ…ありがとうな…こんな小さな友人は初めてできたよ」


そうだろそうだろ!


私は満足気に頷く。


やったね王子の友達ゲットだ!


コレで困った時はファイさんに頼ろう。


私はこっそりとほくそ笑んだ…


王子と今後食べてみたい食事について話しながら尋問室へと向かっていると…前から慌てた様子の従者が走ってきた。


「王子…」


そしてファイさんを呼ぶと二人で廊下の端に寄る、従者が何か耳打ちするとファイさんが面を食らった表情をした。


なんだろ?


王子は従者と少し話すとため息をつきながら戻ってくると…


「ミラ、予定していた部屋が変わった…ちょっと戻るぞ」


「う、うん。別にどこでもいいよ」


「悪いな…」


王子はそれだけ言うとさっきの明るかった様子が消えて言葉少なく先を歩く。


私はイーサン様と顔を見合わせるとお互いに首を傾げた…


そしてある扉の前で止まる…


「ここだ」


「ここ?」


見れば少し重厚感ある扉の前に兵士達が数名立っている。


あれ?私殺される?


厳重な警備に少しビビると…


従者が扉を開けてくれた。


するとファイさんが…


「ミラはいつも通りでいいんだ…」


私にだけ聞こえるようにそっと囁くとそのまま部屋へと入っていく。


ん?


わけがわからずに立ち尽くしていると…


「入りなさい」


中から声がする


「ミラ…」


イーサン様が心配して私に近づこうとして警備していた兵士に止められた。


「イーサン様!」


イーサン様のところに戻ろうとすると…


「大丈夫、違う部屋で待っててもらうだけだからね。君に話を聞く間…」


「イーサン様…行ってくるね。皆さん…イーサン様に乱暴しないでね…」


イーサン様を押さえる兵士をじっと見つめると


「うっ…」


兵士達がたじろぎイーサン様を押さえる力を緩めてくれた。


それを見てほっとすると少し雰囲気の違う部屋へと私は足を踏み入れた。



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