第156話王子
「何隠れてるの?さぁミラおいで君はこっちだよ」
ファイ王子が手を差し出してくる。
まるでその手を掴めと言うような感じに私は渋ってイーサン様を見つめた。
すると
「王子!この娘は私達が案内しますから王子にそのような事は…」
従者達が私を連れていこうとその手を掴んだ。
力の強さに少し手が痛み顔を歪ませると
「離せ」
王子が従者の手を掴かむとねじ上げる。
「いっ…」
従者は痛みに私の手をパッと離すと膝をついた。
「この子は事件の被害者で話を聞かせて貰うためにここに来てもらっているんだ、そのような無礼な扱いは許さないよ…」
王子が膝を付く従者を冷たい目で見下ろす。
「申し訳…ございません…」
従者は顔色を悪くして震えながら無礼を謝ると
「謝る相手違くない?」
王子がニコッと笑った。
「も、申し訳ございません」
従者はミラの方を向いてその頭を地面に着くほど下げた。
「いやいや!ちょっと痛かっただけです!謝らないで下さい!王子!従者さん怯えてますよ!そんな怖い顔するならもううちに来るの出禁にしますよ!」
王子の態度を注意する!
ちょっと手を引っ張ったくらいであんなに怒ることないのに。
「えっ…」
すると従者がびっくりした顔でこちらを見上げた。
「あっ…」
ついいつものように王子に話しかけちゃった…
口を押さえるが出た言葉はもう戻らない…
王子は苦笑すると
「それは困るなぁ~しょうがない、今回はミラに免じて許してやる。でも次はないよ?」
王子は頭を下げていた従者に声をかけると
「この子…いえ!この方は…」
従者は今のやり取りが理解できない様子だった。
そりゃそうだろう。こんな庶民のような子供と王子が仲良さげに話してたら…
しかし王子は気にした様子もない。
「この子は私の知り合いなんだ。だから私が案内する。君達はもういいよ」
王子が唖然とする従者達をあしらうように手ではらう。
「じゃあ行こうか?」
そう言って気にした様子もなくこちらに笑いかけると再び手を差し出した。
これは逆らわない方がいいかな…私は素直に王子の手を取ると王宮内へと連れていかれた。
従者達はさすがに王子を一人にして戻る訳にも行かずに少し離れてその後を着いてきている。
王宮内を歩いているとすれ違う人がファイさんを見て足を止めると端に避けて頭を下げる…その様子を見ながら…
「ファイさん本当に王子なんですね」
当たり前の事を言ってしまった。
「今までなんだと思ってたんだい?」
そうは言いながらもファイ王子は嫌な顔一つしない…それどころかその口からはクックッと笑い声が漏れていた。
「だって…うちに来る時はただの食いしん坊なお兄ちゃんだから…」
「ミラ!」
さすがに不敬すぎたか、後ろから付いてきていたイーサン様が窘めるように名前を呼んだ。
「す、すみません…」
ペコッと謝ると
「別にいいよ、そうか…食いしん坊のお兄ちゃんね…じゃあこれから俺の事はファイお兄ちゃんって呼んでもいいよ」
「いえ、大丈夫です」
字が長くなって面倒だ、ファイさんで十分だろ。
ミラは結構ですと首を振って断った。
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