第124話呼び出し

「フゥ…これは想像以上だった…」


リコはデザートまできっちりといただき満足そうに囁いた…


「料理はまぁまぁでした」


ブレンダンが口を吹いて頷くと


「まぁまぁだと!?何処がだ!初めての料理に調理法!この店の全てが初めての経験だった!しかも客席も素晴らしい…これなら一人で来ても問題無さそうだ」


リコはニヤリと笑うと


「さらに常連になると屋敷まで作りに来てくれるそうですよ」


「なに!それは本当か!」


「オープンより来ている知人が言ってました…しかしなんか怪しいんですよねこの店…」


ブレンダンはじっと空になった皿を見つめた。


「おーい!」


リコは給仕に声をかけると


「お呼びですか?」


給仕が顔を出した。


「今夜は美味い食事をありがとう、是非とも料理を作ってくれた料理長に挨拶をしたいんだが…」


「ありがとうございます。ですが申し訳ございません。ただいま手を離せる状態ではありませんので…リコ様のお言葉は必ずお伝え致します」


「そ、そうか…」


リコが残念そうにすると


「では次の予約を取ってもいいかい?」


「…ではブレンダン様でお取りすればよろしいですか?」


「いや俺個人として頼みたい」


「えっ…リコ…それは」


ブレンダンが顔を顰めると


「すみませんがお二人は兄弟だと伺っておりますが…」


給仕が二人を見比べる。


「そうだが個人的にここに来たいんだ!兄弟だからって常に一緒に食べるわけじゃないからな。なぁ?」


リコは同意を求めるようにブレンダンをみた。


「まぁ…別に…それよりここのオーナーに話があるんだが…」


ブレンダンが給仕を睨むと


「クロード様ですね…」


「いや…もう一人の方だ」


「もう…一人…」


給仕が言葉を詰まらせる。


「ああ、呼んでくれ。ジェイコブ家の元使用人のイーサンを…」


ブレンダンはニヤリと笑った。


給仕はお待ちくださいと部屋を出ていくと


「なんだブレンダン、ここのオーナーと知り合いだったのか?」


リコが聞くと


「いえ…元です。突然辞めたいと言い出して成金風情になったと思ったらこんな店をやってました」


「なら頼んでくれないか!ここの店の常連になりたいと!」


「はい、おまかせ下さい。なんでも言う事を聞きますから」


ブレンダンは頷いた。


少し待つとイーサンではなくクロードが部屋にきた。


「お呼びですか?」


爽やかな笑顔で二人の前に来ると…


「君ではなくイーサンを呼んだんだが?」


笑顔のクロードの顔がピクリと固まる。


「彼は今日は来ておりません。御用なら私が伺います」


「俺はイーサンにようがあるんだ!居ないなら呼べ!」


ブレンダンはクロードを睨みつける。


「お前も貴族といえど伯爵風情だろ?公爵家に逆らうつもりか?」


「お、おいブレンダン言い過ぎじゃないか」


リコがもういいと声をかける。


「すまない、もういいよ。また予約は連絡するよ。今日のところはもう帰ろう」


リコが立ち上がろうとすると


「リコは先に帰ってくれ。俺はここでイーサンを待つので」


ブレンダンはイーサンが来るまで帰る気は無いようだった。

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