第123話ジェイコブ侯爵家
「あの店の予約は取れたか?」
ファイ王子の言葉に側近はコクリと頷いた。
「ジェイコブ公爵様のご子息が知り合いを通じて予約なさったそうです」
機嫌悪く報告する。
「なんだよ、あの店行ってみたかったんだ…少しくいらいのわがままを許してくれたっていいだろ?」
「それはよろしいですが頼んだ相手がよくありません」
「ブレンダンがか?」
「はい、ジェイコブ公爵家からはあまりいい噂は聞きません。王子も気を許さないように…」
「わかった…とりあえず飯を食うだけだ。一度通えば会員になれるんだろ?そうすれば次は一人で行くからさ」
側近の男はそれならばと頷くと…
「日にちは明後日です。名前は伏せて侯爵家として行ってください」
「わかった!」
王子は 食べられるならと素直に頷いた。
「名前はリコと…」
「リコ?ブレンダンのところの三男の名前じゃないか」
「はい、彼から借ります。何かあったらそちらに責任をとってもらいますので」
側近はしれっと答えると
「わかったよ、リコ…リコね!」
王子は確かめるように呟いた。
当日…ブレンダンが迎えにきてリコは馬車へと乗り込んだ!
「すまないなブレンダン、今日は助かったよ」
リコはニカッと笑うと
「お役にたてたなら幸いです…父からもよろしくと言っておりました」
「ふーん、わかった」
リコは曖昧に返事をすると
「今日は君の弟として行くわけだからかしこまった口調はやめてくれ。俺は純粋に食事を楽しみたいだけだから」
「はい…いえ…ああ、わかった」
ブレンダンの答えにリコは満足そうに笑った。
店に着くとこの店のオーナーと思われる男が出迎えた。
「これはブレンダン様この度はご予約ありがとうございます」
男は笑顔で頭を下げると
「こちらに…」
待っていた給仕の男を呼ぶと早速中へと案内させた。
長い老化を通されると扉を開けて一室へと通される。
「料理はおまかせとなっております。何か御要望がありましたら私をお呼び下さい」
ブレンダンとリコはこくっと頷いた。
「それでは飲み物はいかがなさいますか?」
「それも任せられるかな?」
リコが聞くと
「もちろんでございます。ブレンダン様もよろしいでしょうか?」
「いや、俺は酒はいい」
「アルコールの無いものもございます。そちらを御用さて頂いてよろしいでしょうか?」
「ああ、頼む」
男は頭を下げるとそっと部屋を出ていった。
「なかなか感じがいいな」
リコは興味深げに部屋の中をキョロキョロと見つめると
「そうですか?少し派手で下品な気がしますが…」
ブレンダンはつまらなそうにしていた。
少し待つと先程の給仕が飲み物を持ってきた。
リコの前には赤い葡萄酒をブレンダンの前には二層に別れた飲み物を持ってきた。
「これは?」
初めて見る飲み物に二人は釘付けになる。それはそこには紫色の液体が沈み上はオレンジ色の液体が注がれていた。
「こちらはカシスオレンジという飲み物です。女性に特に人気となっております。混ぜてお飲み下さい」
「ふーん…」
ブレンダンは綺麗な配色をあっという間にかき混ぜた。
「あーあ!もったいない」
リコが残念そうにしていると…
「こちらはお酒入りもございますよ」
「なに!じゃあそれももらおう!」
リコはすぐに注文した!
「じゃあ乾杯!」
二人はグラスをあげてとりあえず乾杯をする。
リコは混ぜる前には少しだけオレンジ色の部分を飲んでみた。
「これはオレンジジュースだな…」
混ぜると紫色が強く出る、そしてクイッと飲んでみると
「甘いな、だが美味い!これなら何杯でも飲んでしまいそうだ…」
満足そうにカシスオレンジを飲んでいると…
トントン
「失礼致します、前菜をお持ちしました」
先程の給仕ともう一人後ろに連れてきながら料理を運んできた!
来た来た!
リコは早く早くと顔を輝かせた。
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