第79話案内

ロイズは医務室に案内すると扉を開けてやる。


するとそこにはメイソンと数名の囚人達が作業していた。


メイソンは入ってきたロイズに目を向けると…


「なんだ?また薬か?」


声をかけると


「いや、今日はこの子を案内してるだけだ…話は聞いてるだろ?看守長のお知り合いの子だ…」


ロイズの言葉に作業中の囚人達が一斉に物を落とした!


ガシャーン!


「おわ!ど、どうしたんだよ!」


ロイズが驚くと


「手が…滑りました…」


囚人達は各々落とした物を拾うと


「すみません…片付けて来ます」


「私は雑巾を…」


皆理由を付けてその場を離れた。


メイソンは一人顔色を変えずにミラを見つめていたが…ロイズに目を向けると…


「そういえば看守にピッタリの薬を作ったんだ…使ってみないか?」


メイソンはロイズに棚から薬品を取ると差し出した。


「へー!なんの薬だ?」


ロイズが受け取ると


「何ってアレの薬だよ…滑りを良くするな…」


ニヤッと笑うと


「お、お前!こんな所でなんて物を!」


ロイズ看守が慌て出すと


「何を慌ててる?道具の滑りを良くする薬だぞ?一体何と勘違いしたんだ?」


メイソンがニヤニヤと笑うと、ロイズは大量の汗をかく。


「こ、ここは暑いなぁ…ミラちゃん、俺は扉の外で待ってるね、見学終わったら声をかけてよ」


ロイズは居心地悪そうに外に出ようとすると


「いいか、この子に手を出すなよ」


一応メイソンに注意する。


「はいはい、こんな子供に何するってんだ…」


メイソンはロイズを無視して机に向かうと、ロイズはため息をついて汗を拭いながら外に出た。


パタン…と扉が閉まる音がすると…


「メイソンさん…」


ミラが恐る恐る声をかけた。


「ミラ、ここに座れ」


メイソンはミラを見ないで自分の前の椅子を示すとミラはおずおずと近づいた。


高い椅子にどうにか座ると、メイソンさんが診察を始める。


慣れた様子で心音や顔色、目や耳口の中を調べると…


「少し…痩せたな。もう少し食べないと駄目だ…」


顔を見ずに何か書きながら声をかけた。


「うん…おっきくなれないよね。もうメイソンさんの診察受けられないんだね…寂しいな…」


「ふん、こんな所のヤブ医者の診察など何になる…外に行けばもっとしっかりとした医療を受けられる…いいかちゃんと受けされてもらえよ」


「はい…ありがとう。メイソンさん…みんなも…」


ミラは後ろで作業しているみんなにも声をかけた。


ガチャ!


するとまた何かが壊れる音がした…


「これは医療をかじる者としての義務だ…別に礼を言うことではない…」


「でも…ありがとう」


ミラが笑いかけるがメイソンさんはこちらを向くことはなかった…

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