第80話メイソン

「ほら、もう行け…あの看守が待ってるだろ。あいつは…ロイズ看守はここのではまぁまぁ話のわかるやつだ…しっかりと言う事を聞け」


「うん…でもそれも今日まで…かな」


ミラが笑うと


「あっ…そうだな…」


ミラとメイソンに沈黙が走る…


「ああ、そういえばお前の渡そうと思っていたのがあったな…」


アリソンは席を立つと違う部屋に行き何か薬を持ってきた。


「これは看守達に渡す薬だ…お前も持っていけ」


ミラは小さな薬を受け取ると


「ありがとう…メイソンさん元気でね」


ミラはそっと席をたった。


ミラが部屋を出ていくと…部屋から出ていた囚人達が戻ってくる。


「ミラちゃんは…」


メイソンに声をかけると


「行った…今日が最後の日らしい…」


「そうですか…アリソンさん…」


心配そうに声をかけると


「大丈夫だ、さぁ仕事をしろ薬が無くなったからな…」


「薬…?ああ、あれミラちゃんにあげたんですか?」


「あれって確かメイソンが何年もかけて作ってた薬ですよね…よっぽどの事が無いと使わなかった…」


「あれなら少しくらいの傷なら治る、最後にミラに渡せてよかった…」


「そうですね…」


「すまんが材料が足りない…皆で取ってきてくれるか?」


メイソンが頼むと囚人達はまだある材料をチラッと見る…そして黙って頷くと部屋を出ていった。


メイソンは一人になり机の資料に目を通す…そこにはミラが生まれてからずっとつけてきた診断書があった。


今日の日付を書いて最後のサインをする…ペラペラとミラの成長を確認した。


「ああ、この日は熱が出た時だな…ジョンか慌てたなぁ…この日は看守に叩かれて傷ができた時だ…あの時はローガンが怒っていたな…」


全てのミラの記憶がそこにはあった…


メイソンが更にページをめくると…パラッ…と何か紙が落ちてくる。


メイソンはなんだったかとそれを拾い上げた。




ミラはロイズと共に次の場所に向かっていた。


ギュッとメイソンさんから貰った薬を握りしめていると…


「それはどうしたの?」


ロイズが聞く


「あの…お医者さんみたいな人に…もらいました」


「へーメイソンが?珍しいね」


ロイズが驚いている。


「ロイズさんもお薬貰ってましたよね?」


ミラが聞くと


「あ、ああ、あれは違うよ。看守が使う道具みたいなもんだからねちゃんと仕事のうちさ。メイソンが人に薬なんて渡すわけないよ、薬の材料は高いからね…みんな金を渡して買ってるのさ」


「そう…なんだ…」


「だからタダでミラちゃんに薬をあげたなんて驚きだな!よっぽど可愛かったのかもね」


ロイズが笑わそうとしてミラに話すと…ポロ…ミラの瞳から一粒水がこぼれた気がした。


「ミラちゃん?」


ロイズが顔を覗き込むがミラは泣いてはいなかった…


「なんですか?」


笑ってロイズを見つめると…


「いや…なんでもないよ」


ロイズは首を傾げる。


確かに涙だと思ったけど…


自分が見間違えたのかとロイズは肩をあげた。

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