第78話ハーパー

「おい、ハーパーその鳥って触ったり出来るのか?」


ロイズは仕事をしていたハーパーに声をかけると


「なに?今仕事中なんだけど…」


顔を上げずに土をいじっている。


「あそこに子供がいるだろ…あの子がその鳥を触りたいみたいなんだ、少し貸してもらえるか?」


「ノア…どうする?」


ハーパーがノアに聞くと…ノアはハーパーの肩から飛び上がりミラの元に向かった!


「これでいい?」


ハーパーがロイズに確認すると


「あ、ああ…すまないな」


ロイズはぶっきらぼうなハーパーに声をかけた。


ノアは真っ直ぐにミラの元に向かうと…


「ノアちゃん…」


ミラは手を差し出してノアを受け止めた。


「よかった…ノアちゃんもハーパーも元気そうで、全然会えなくて寂しかった…」


ミラが寂しそうに笑うとノアはミラの頬に擦り寄った。


「最後に会えてよかった…ハーパーにありがとうって伝えてね。ノアちゃんも元気で…」


ミラはノアちゃんの頭にちゅと口付けをするとノアを離した。


「もういいのかい?」


見ていたロイズが聞くと


「はい、たくさん触れました。皆さん…お忙しい所お邪魔しました。ありがとう…ございます」


ミラはお世話になりました。と頭を下げるとニコッと笑い畑を後にした…


ミラとロイズが居なくなると…手を動かしていた囚人達が耐えきれずに道具を落とした…


「ミラちゃん…」


「今日が、最後なんだな…」


大量に流れる汗を拭った。


「おい、ハーパーお前はいいのかよ…」


タオルを顔にあてて囚人の一人が声をかけた。


ハーパーは一人鍬を動かしながら…


「いいんだ…これで喋ってやっぱり残るなんて言わしてみろ…一生後悔する…」


「だな…あーもう明日からミラちゃんの料理食べれないのか…」


一気にやる気の無くなった囚人達はその場に座り込むとしばらく動けそうになかった…



「次は何処に行く?」


ロイズ看守が聞くと…


「医務室に…」


「えっ!どこかケガでもしたの!?」


ロイズがミラを見ると


「いえ…どんな所か見てみたくて、駄目…ですか?」


ミラが懇願するようにロイズを見上げると


「大丈夫だよ、でも楽しい所じゃないけど…あそこの囚人は無愛想で全然笑わないからなぁ…ミラちゃん怖がっちゃうかもよ」


ロイズが心配すると


「大丈夫です…囚人さん達の顔には慣れたから…」


笑って頷いた。

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