第51話パン料理

囚人達は並んでいる料理に手をつける。


「これはなんだ?」


甘い香りに黄色のパンが敷き詰められたものを取ると


「これは…パンプディングだ」


ビオスが説明する。


「プデ…ング?」


「プディング!まぁデザートみたいなもんかな、食ってみろ美味いぞ」


ビオスさんが頷くと


「ビオスはもう食ったのか?」


「ああ、味見がてらミラと食った…早く食ってみろよ。驚くぞ」


ビオスがニヤリと笑うと


「じゃ、こっちは?」


「これはパングラタンだ」


「グラタン…これはなんか匂いも色も美味そうだな…でもまたパンか?」


「今日は全部パン尽くしなんだよ…ミラが作ったんだからな…」


ビオスが念を押すと


「わかってるよ…ミラちゃんが一生懸命作ったもんなら…文句は言わねぇよ。たとえ不味くてもな!」


「馬鹿だなぁ…それが全部美味いんだよ!しかもどれも味が違うしな…あいつは大したもんだ」


囚人達はミラが考えて、ビオスが作った料理を喜んで受け取っていた。



囚人達の様子と甘い匂いに誘われて看守がまた食堂に顔を覗かせる…


しかし様子を伺うばかりで中に入ってこようとはしてこなかった。


「あいつらまた来てやがる…」


「本当に卑しい奴らだな…囚人の飯をたかるか?普通…」


囚人達はミラのご飯を渡すものかと隠しながら口に運ぶと…


「うっ…」


一口食べて口を押さえる…その様子に他の囚人達も食べると、皆同じような反応を示した。


「ありゃ美味くなかったんだな…なんだって看守長は囚人達の食堂の出入りを禁止にしたんだか…」


看守達は顔を顰めると


「囚人達が騒ぎでも起こしてくれりゃあ堂々と入れるのにな…」


看守達はじっと中の様子を伺っていた…


「お、お前ら…看守達に見つかるなよ…」


ミラのご飯を食べた囚人達は一同に顔を隠す。


気合いを入れないと思わず叫び出しそうなほどミラの料理は美味かった。


「なんだこれ?本当にパンなのか?」


「あの硬いパンは何処にいったんだ?舌でとろけるこのトロトロの物がパンなのか?」


グラタンに手をつけた囚人達は不思議そうに中を確認する。


「トマトの酸味とチーズの塩気クリーミーなこの白いソースがたまらん…」


うっとりとした顔をしそうになると…


「おい!顔が崩れてるぞ!」


他の囚人達が注意する。


「くっそ…看守共め!この美味い料理を思いっきり味わいたいのに…」


囚人達は堪らずに看守達を睨みつけた。

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