第50話パン

ミラはパンを作る材料を用意してもらうと


「まずは生地を捏ねるでしょ、固くなるのは水分が少ない事があるんだって…だから水分量を細かく計りながら作ってみようと思うんだけど…」


「わかった。大丈夫だぞミラの思うようにやってみろ」


ビオスさんは頼もしく頷いた。


「後は発酵が足りないのも原因なんだって!温かい場所でしっかりと発酵させるようにしてね」


「ああ、ならこの部屋はどうだ?窓がないからちょっと暑いんだよ」


「いいね、後は湿度も大事みたいだから生地が乾かないように水をふきかけるといいと思う」


ミラとビオスは試行錯誤しながら何度もパンを焼いた…


「出来た…」


ミラとビオスの前には大量の試作のパンの山の中にフワフワにふっくらと湯気が立つパンが出来た…


「この前に焼いたのでも十分にいい出来に感じたが…こりゃ美味そうだな!最初の硬いパンなんかもう食えねぇぞ」


「ふふ、大袈裟だなぁ…硬いパンだって料理次第では美味しくなるよ」


「そ、そうか…ならこの試作も無駄にはならないよな?」


ビオスがちょっとビビリながらミラに聞くと


「もちろんだよ!全部ちゃんと使うよ」


ミラの言葉にビオスはほっとする…パンだけを出したら囚人達から文句を言われること間違いなしだ…


まぁミラが作ったと言えばみんな文句を言わずに喜んで食うかもしれないが…


「じゃあビオスさんこのレシピしっかりと保存しておいてね、さてと…この作ったパンはどうしようかなぁ~」


ミラはパンの山を眺めると…


「みんなは甘い物とかは好きかな?」


ミラはビオスに聞いた。



その日の朝食堂では甘い匂いが囚人達を出迎える。


「ん?なんだ…この匂い」


囚人達が顔を顰めると…


「おはようございます」


ミラが可愛いエプロンを身につけて出迎えてくれた。


「ミラちゃん!おはよう!」


「あれ、今日はミラちゃんが?」


囚人達は一変して顔を綻ばせる。


「うん、みんなは甘い朝ごはんは嫌かなぁ?ビオスさんはなんでも大丈夫だって言ってたんだけど…」


ミラは伺うように聞くと


「俺達なんでも食べるから大丈夫だよ!ミラちゃんが作ったんなら美味しいだろうなぁ~楽しみだ」


囚人達は喜んで料理を取りに向かった。


「あっ…考えたの私だけど…作ったのビオスさんなんだけど…まぁいっか。同じ事だよね味は変わらないもん」


ミラは行ってしまった囚人達にその事は伝えずに次々にくる囚人達に声をかけた。

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