第32話勝者

「ミラ、おはよう…」


聞きなれた声にミラは目を覚ますと…


「ハーパー…おはよう。ノアもおはよう」


ミラは眠い目をうっすら開けるとノアが顔に飛び込んできた!


「わっ!」


ミラは驚いて後ろに倒れそうになると


「おっと…」


ハーパーがサッと受け止める。


「ありがとう、ハーパー」


「まだ本調子じゃないんだから、ノア気をつけてよ」


ハーパーがノアに注意するとしゅんと項垂れて顔を下げてしまった。


「ノア大丈夫だよ、おいでー」


ミラが笑って呼ぶとノアは様子を伺うようにこちらを見ている。


「ゆっくり来てくれれば大丈夫だよ」


ミラのことばにノアはパタパタとゆっくり飛んでミラの肩に止まった。


「ふふノアはいつでもフワフワだね」


ミラはすりすりと頬を寄せる。


「ノアってなんの動物なの?変身出来る動物とか見たことないよ」


疑問に思って聞いてみると


「ノアは…動物って言うか…魔獣かな」


ハーパーが言うと


「へー!まじゅうかー」


よくわかんないやとミラはニコニコとノアを撫でる。


「ミラはノアが怖くないの?」


「ノアが?どこにも怖い事なんて無いよ?」


「だって…牛になったり…ラクダになったり…ノアなら竜にだってなれるんだ」


「えー!すごい!なら私の事も乗せられる?」


ミラが顔を輝かせて聞くと、ノアは嬉しそうにその体をドラゴンに変えようとした!


「ノア!ここじゃ駄目だよ!部屋が壊れる!」


ハーパーが急いでノアを止めると


「そっか…ここだとノアが飛べる空がないね」


ミラが残念そうに元に戻ったノアを撫でた。


「でもミラは竜とかもわかるんだ?」


「うん、前の記憶にあったよ」


ミラが頷くと…


「じゃあ…僕の事もわかるかな?」


ハーパーは髪をかきあげるとそこには長い耳が姿をあらわした。


「あれ?ハーパー耳が長いんだ。えーっともしかしてエルフとか?」


綺麗な顔で長い耳、ミラの記憶の中の知識を言ってみると


「そう…僕はエルフなんだ」


ハーパーが悲しそうに答える。


「じゃハーパーも特別だね」


ミラは嬉しそうにハーパーに微笑んだ。


「特別?」


「うん、私と同じでしょ?私も記憶が二つあって特別…だけど私は私。ハーパーもエルフだけどハーパーはハーパーだもんね!」


「そうだな」


ハーパーは嬉しそうに頷いた。


「でも…」


ミラが顔を曇らせると…


「な、なに?」


ハーパーは何を言われるのかと身構える…やはり人とは違う自分は気味が悪いと思われたのかと…


「エルフと人ってなんか違うの?」


ミラは何が違うのがわからずに伺うようにハーパーに聞いた。


「全然違うだろ、人間は人族だけど僕らエルフはエルフ族だお互い違う種族は相容れないだろ?」


「そうなの?なんで?」


「なんで…ってなんでも!昔からそうなの!」


ハーパーが言うと


「ふーん…なら男と女にだって違うじゃんね?大人と子供だって違うし…そんな大した違いがあるのかな?」


ミラはよくわかんないと首を捻った。


そんな様子にハーパーはミラの頭を撫でると


「そうだな…ミラからしたらそんな問題なんだな」


ハーパーは嬉しそうにミラに微笑む。


「あれ?ハーパー泣いてる?」


なんだか目が赤い気がするハーパーを心配そうに見ると


「大丈夫、これは嬉しいだけだからね」


ハーパーがにっこり笑うとミラはさらに首を捻った。

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