第30話同じ思い
ミラが泣くのをジョンは扉越しで抱きしめる。
腕しか出ないのが歯がゆい、泣くミラをちゃんと抱きしめてやれないのが悔しかった。
小さい体をヨシヨシと撫で続けているとようやくスッキリしたのかミラが落ち着いてきた。
「スッキリしたか?」
「うん…」
その顔は瞼が腫れて鼻や頬が真っ赤になり酷いさまだったが来た時の顔より晴れやかに見える。
「もうそろそろローソクが燃え尽きるな…あと数日で戻るからみんなといい子にな」
「いい子にするのはジョンさんでしょ…」
ミラがボソッと言うと
「こいつ、さっきまでのしおらしい態度はどこいった!」
ぐりぐりとミラの頭を小突く。
「あはは!うそうそ、いい子に待ってるね、だから…早く出てきてね」
ジョンの温かい手をギュッと握りしめる。
「おお」
ジョンは嬉しそうに頷くと…
「あとな、さっきの話ローガン達には話してみろ」
ジョンを見ると真面目な顔をして頷く。
「お前をずっと赤子の頃から世話してきた奴らだぞ、そんなの程度の話であいつらの気持ちは変わらん」
「うん」
「そうだよな?ローガン」
ジョンがミラの後ろに視線をずらした…後ろを振り返るといつの間にかローガンが立っていた。
「ミラ…」
ローガンは驚いて見つめている…話を聞いていたのかと思うと…
「その顔はどうしたのですか!?」
慌てて抱き上げると心配そうに顔を覗き込む。
「ああ、あんなに様子がおかしいからここに連れて来させて見れば…やっぱりジョンなんかに会わせるべきではなかった…」
ローガンは悲しそうな顔になると
「すみませんミラ…そんなに泣かせてしまって…何を言われたのでますか?ジョンはこのままここに閉じ込めておきましょうか?」
あまりに狼狽えた心配ぶりに思わず吹き出すと…
「あはは!ローガンさん心配し過ぎ!」
たまらず笑い出す。
ローガンは笑っている私の顔を驚き見つめていたが…
「よかった…」
急に優しい笑顔に戻って力いっぱい抱きしめてきた。
私も優しいローガンさんを抱きしめて返すと…
「心配かけてごめんなさい…帰ったらみんなに話があるんだ…聞いてくれる?」
そっと耳元で呟くと
「ええ、是非とも教えて下さい」
何も心配することは無いと包み込むような笑顔を返してくれた。
ミラはジョンにまたねと手を振ると独房を後にした…来た時と同じ様に帰っていく二人をジョンはじっと見つめていた。
ガッチャン!
重そうな扉が閉まるとまた辺りは暗闇に包まれる。
ジョンはドサッと後ろに倒れ込むと…
「よかった…」
暗闇のなか一人噛み締めるように呟いた。
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