第19話ザルバ

どうも最近周りの様子がおかしい…同僚は急によそよそしく距離をとり時には睨みつけるようにすれ違う…


まぁ馴れ合うつもりなどない職場だと、そんな様子にも構わないでいた時に事件はおきた…


その横柄な態度から仲間達からも疎遠にされている上司のフラーが凄い形相でこちらに向かって歩いてきた。


また誰かが何かしでかしたのかと思い道を譲ると…


「おいお前!」


フラーは俺を睨んでいた…身に覚えのない俺はキョロキョロと周りを確認するがやはり自分に声をかけている。


「なにをすっとぼけている!お前の事だよザルバ!」


「な、なんでしょうか…」


ムカつく奴だが一応上司だ…しかも体格も違いすぎる、俺は神妙な態度で伺うようにフラーを見ると


「偉い事をしてくれたな…俺に手を出してタダですむと思っているのか!」


わけが分からない…極力関わらないようにしていた相手だけにやはり思い当たる節がなかった。


「すみませんが人違いではないでしょうか?」


「はぁ~」


とぼけていると思われたのかフラーのこめかみがピクピクと動き出す。


今にも血管がキレそうなほどに顔を赤く興奮していると…


「お前が俺の金に手を出した事はわかってるんだ…しかも俺が届けを出せないように隠し金に手をつけやがって…この落とし前どうつける気だ…」


首根っこを掴まれるとグイッと引き寄せられて足が宙に浮く。

耳元で呟かれ…顔が近づき臭い息が顔にかかり思わず顔を顰めてしまうと…


「なんだその顔は…」


ぐっと首を締められる!


息が苦しくなりバタバタと暴れると既のところで離される…


「いいか…明日までに金を戻しておけ…そうすれば腕の一本ぐらいで許してやる。もし逃げてみろ…お前の家族の居場所は把握してるからな…」


「が、ガゾグゥ…」


ゲボゲボとヨダレを垂らしながらフラーを見上げる。


「可愛い娘がいるそうだな…」


言葉の意味を理解して血の気が引く…


フラーはニヤッと笑うと来た時と同じように足を踏み鳴らして去っていった…


最近みんなが避けていたのはこれか…しかしフラーの金になんて手なんて出すはずがない一体なんでだ…


しかし今はそんな事を探っている場合ではない!とりあえず急いでその金を戻さなければ…


とりあえず今の持ってる金を渡そうとザルバはヨロヨロと書簡部へ急いだ…


ザルバが書簡部につくと、ローガンが出迎えた…


ザルバは笑う…こいつならきっと上手いことやってくれるだろう。


そう思ってこれまでの経緯を話してどうにかしろと命令する。


「しばしお待ちください」


ローガンは静かに頭を下げると何人かに声をかけて書類を確認していると思ったら渋い顔をしてそれらを大量に持ってきた…


「ザルバ様、ただいま確認しましたが確かにあなたはフラー様のお金を奪っております」


「はっ?そ、そんなわけない!俺は何もしていないんだ!」


「それはこちらではなんとも…ここにある書類が証拠です」


そう言って細かな数字が無数に書かれた紙を何枚も見せられる。


「こんなの見てもわかるか!」


バンッと書類を払うと書簡部に書類が舞った…その様子を囚人達は無言でじっと見つめている。


「どうにかしろ!何をしてもいいからフラーに金を返せ!早くしろ!今すぐしろ!」


周りの事など構わずに喚くと、ローガンは静かに蔑むように見下ろしてくる。


「それはできません…我々はあなたと何も約束も契約も交わしておりませんから…」


「はっ?何を言っている…ここの看守の帳簿をお前らがつけているんだろ!」


「そうですがそれは仕事としてやっております…それを勝手に動かすなど…そんな事をすれば我々と同じになりますよ」


ローガンは湧き上がる感情を抑えながら微笑んだ…

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