第18話書簡部

「これはなんだ!」


どう見ても叩かれた痣にローガンを睨みつけると、ローガンはここに来るまでの経緯を説明する。


「迂闊でした…ついミラといられると思うと浮かれていたのでしょう。私のせいです」


ローガンが項垂れると


「気をつけろ!」


思わずメイソンが怒鳴りつけると、ミラがローガンを庇うように腕を広げる。


「ろーがんしゃんわるくないの!」


じっと目をうるませてメイソンを見つめる。


「悪かった…二人を怒ってるわけじゃない…心配してるんだ」


メイソンはふっと肩の力を抜いてミラに謝ると


「うぅぅぅ…」


ほっとしたのか涙を流す…


「ミラ!」


ローガンが思わず抱き上げると


「なっかよしっ…よかったっ…うーーいちゃあいぃ!」


腕が痛いと泣き出してしまった、どうやら心配させまいとずっと我慢していたが限界が来たようだ。


メイソンが急いで痛み止めを塗ると次第に落ち着いてきた…


そのまま泣き疲れてローガンの腕の中で眠ってしまうと


「あの看守…絶対に許しません…」


ローガンの顔が一気に強ばる。


「名前を聞いたのか?」


メイソンが聞くと


「ええ、しっかりと。ザルバ…様と呼べとほざきましたよ…メイソン、すまないが少しミラを見てて貰えるか?」


メイソンは頷くと


「早くしろよ、私も仕事を抜けて来たのだから…」


「あなたなら大丈夫でしょう」


ローガンは笑うと部屋を出ていった…



ローガンは書類整理の仕事場にくると…


「あれ?ローガンさん今日はお休みでしたよね?」


同じ仕事場の囚人達がローガンに気がついた。


「すみませんがザルバと言う看守の書類を探してもらえますか?」


みなは頷くと今の仕事を放り投げて書類を探す…程なくして


「ありました!」


ローガンの元に持ってくると…中身をサッと確認する…


「ふん…小物が…」


冷たい視線で書類を睨みつけると…


「コナー、コイツの書類を改ざんしていただけますか?」


コナーと呼ばれた男は黙って頷き書類を受け取ると


「どんな風に…」


チラッとローガンを見ると…


「徹底的に…死にたくなる程度にお願いします…なんせミラを叩いて痣を作ったのですからね…」


ローガンの言葉に書簡部がザワついた…


「ミラちゃんを?」


「どういうことですか?叩いたって…」


みんな怒り心頭でローガンに迫る!


ローガンは、自分の不始末を説明すると…


「私が庇っていれば…」


悔しそうに拳を握りしめる…


「なんて、最悪な奴だ!書簡部に手を出してタダですむと思うなよ…」


「コナー徹底的にやれ!」


みんながコナーの周りに集まると…


「終わった…」


コナーが静かに呟く。


「えっもう終わったの?どんな風にしたんだよ」


皆が覗き込むみ、書類を確認すると皆がニヤニヤと笑い出す…


「ふふ…最高じゃん!ここの看守の中でも特にタチの悪いフラーの金に手をつけるなんて…ザルバ終わったね」


「しかもそれだけじゃないわ、男食いで有名なジャマルの金も横流ししてる!この証拠の書面さすがだわ」


コナーの仕事ぶりをみんなで称える。


「あとはこの人達が気づけば終わりだね…楽しみだ」


書簡部は愉快な笑い声で包まれた…

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