第20話ザルバ2

「だ、だって他の奴らの帳簿をいじっているだろ!知ってるんだぞ」


「ええ、もちろんやっております。それはその方々からそれ相応の報酬をいただきやらせて頂いておりますので…我々だってこれ以上危ない橋をタダでは渡れませんから」


「な、なら俺も金を払う…だからやれ!」


「申し訳ありませんがそれもお断り致します」


ローガンは笑顔で断りをいれた。


「なんでだ!」


「ザルバ様は敵を作りすぎております…特にフラー様など我々の上客ですから…そんなお方に手を出したなどとしれたら我々も罰されかねません」


綺麗な眉を下げながらザルバに近づくと…耳元で囁く…


「こんな事は子供でも出来ますよ…我らならものの数分で…この書類をお持ちください…よく読めばわかることですから」


ローガンはザルバが撒き散らた書類を拾い集めるとザルバの前に置く。


「では我々は仕事がまだありますので…コナー、ザルバ様はお帰りです。外までお送りしてください」


「はい…」


コナーは立ち上がると愕然と座り込むザルバを抱えて扉の外に放り投げると書類を上から置く。


「ここにいると邪魔だ…そんな座り込んでる暇があるなら読め…」


ボソッとつぶやくとバタンと扉を閉めた。


ザルバは呆然としながらフラフラと歩いていく…


なんかあの囚人…いい匂いだったなぁ…フラーなんか看守の癖に臭いとかどういうことだ…看守が囚人に負ける…


ザルバは一気に起こった出来事に軽く現実逃避をしていると


「ザルバ…大丈夫か?」


優しく声をかけられ顔をあげると…


「ジャマルさん…」


そこには先輩のジャマルが心配そうに顔を覗き込んでいた。


「ちょっと話があるんだが、なんか俺の金がお前の所に移動してるらしいんだけど何か知ってるか?」


「ジャマルさんのまで…」


ザルバは頭を抱える。


ジャマルは優しくザルバの話を聞くと…


「なるほど、わけがわからない間に金を盗んでいたと…」


「盗んでません!勝手に移動したんです」


「だかな、そんなことあると思うか?お前が逆の立場でそう言われたらどう思うよ」


ザルバは肩を落として…


「信じません…でも!本当なんです」


縋るようにジャマルにしがみつくと…ジャマルはザルバの肩に優しく手を置く。


「俺の金はまぁ待ってやる…だがフラーのは早く返した方がいいぞ…あいつは何をするかわからんからな」


「でも…どうやれば…」


ジャマルは顎に手を当てて思案していると…


「俺が…手伝ってやろうか?」


ジャマルはザルバに微笑んでそんな提案をする。


「本当ですか!?」


「ああ、その代わり…俺の頼みも聞いてくれるか?」


「もちろんです!何でもします!」


ザルバはやっと見えた希望に目を輝かせると…


「じゃあとりあえず仕事は少し休め、フラーに目をつけられてたら出来ることも出来んからな…」


「はい、わかりました!これから休みを貰ってきます!」


「ああ、俺は用意をして部屋で待ってるよ…あっ!それとこれは一番重要だ」


ジャマルが真面目な顔をすると…


「いいか、俺の部屋に来ることは誰にも見られるな、もちろん言うのも無しだ!知られるとまずいからな」


「はい!」


「家族にも怪しまれないよう誤魔化して言付けでもしとけよ」


「そうですね…いや、ジャマルさんに相談してよかった!俺一人なら何も出来ませんでした」


「いいんだよ…じゃあ待ってる」


ジャマルはザルバの肩を撫でるように触って手を離すと…ザルバは背筋がゾクッとした…


しかしそれどころではないザルバは早速と立ち上がると…


「ジャマルさんに声掛けもらって本当に助かりました!ありがとうございます」


ザルバは頭を下げる。


ジャマルはニコッと笑うとザルバは休みを貰う為に看守室へと走った!


その後ろ姿をジャマルはニヤリと笑いながら見つめていた…

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