第3話イーサン
二人で辛すぎる現実に打ちのめされていた…外では雨の音が途切れる事無く音を刻む、何分…いや何時間とそうしていただろうか、二人は動くことなくメアリーの事を考えていた。
メアリーは捨てられた子供だった…それをゾーイが拾い育てていた。
メアリーはゾーイのもとで可愛らしく優しい女の子と成長した…そんなメアリーをジェイコブが町で見初めて養子としたのだ…
普通の町娘が貴族となれるチャンスなど滅多にない、ゾーイはメアリーと離れるのは寂しかったがメアリーの為と思い祝福して送り出した。
メアリーはゾーイと離れる事を最初は嫌がった…しかしいつでも会いに来ればいい、幸せになって欲しいと説得し二人は笑顔で別れることを決意した。
その時にメアリーを迎えに来たのがイーサンだった…
イーサンはそのままメアリーの世話役となり慣れない貴族の生活で従者としてメアリーを支えた。
メアリーはそんなイーサンを頼りにして信頼していた…イーサンもメアリーの優しい心に娘の様に面倒を見ていた。
ジェイコブはこの時はまだメアリーの容姿に目をつけ男しかいない家の政略結婚にでも使おうと考えていた…しかしメアリーは成長するにしたがい、可愛らしかった容姿は女性らしく変わり誰もが振り返るほど美しくなっていった…
その美しさは義父をも魅了してしまったのだ…
メアリーには毎日のように婚約をしたいという手紙が何通も届いた…上は公爵家から下は裕福な商家の家まで…しかしジェイコブはそんな手紙を見ることなく焼き切った…そしてあの運命の日がやってきてしまったのだ。
この日メアリーは王宮からのお茶会に招かれてイーサンでは無い従者を引き連れて参加していた…
そして予定より遅い時間に帰ってくると…心配をしていたジェイコブが帰宅したメアリーの部屋に駆けつけた!
「メアリー!なぜこんなに遅くなったのだ!」
メイドを押しのけて部屋に駆け込むと…
「だ、旦那様!ただいまお嬢様はお着替えを…」
お付のメイドが必至に止めようとするが頭に血が上ったジェイコブはそのまま部屋へと入ってしまった…
そこで見たものは月明かりに美しく白い肌を晒しているメアリーだった…
メアリーはドレスを肩まで脱ぎ背中と腕が顕になっていた、ジェイコブの姿にサッと隠すが一度脱がされたドレスの間からはうっすらと肌が見える…
「メアリーと話がある…お前らは出ていけ…」
聞いたことないジェイコブの声にメイド達は返事も出来ずに立ち尽くす。
「聞こえなかったのか!出ていけ!この部屋に近づいた者には罰をあたえる!」
ジェイコブの言葉に使用人達は何も出来ずに怯えるメアリーを残して部屋を出ていった…
その後何があったのかはジェイコブとメアリーしか知らない…
しかし部屋から出てきた時ジェイコブは鼻が潰れて血を流し…メアリーはもう穢れた醜い女だと罵りそのまま屋敷に監禁された…
そしてあれよと無実の罪を突きつけられ収容所に送られることとなってしまった。
ちょうどその時に用を言いつけられ屋敷を開けていたイーサンは戻ってきて愕然とした。
屋敷のメアリー様に仕えていた使用人はほぼ解雇され、メアリー様は収容所…誰に何を聞いても皆口を噤んでしまっていた。
イーサンはそのまま屋敷に残りどうにかメアリー様を助けるすべは無いかと探っていたが何も証拠など無かった…まるで本当にメアリー様が不貞を働いたかのような証拠は山ほど出てきた。
メアリー様はいつの間にか王族との婚約が決まっていたのにも関わらず何処かの町の男と関係を持ったとされ捕まったのだった。
しかしその真相は…イーサンには知ることが出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます