第4話ゾーイ
メアリーとの出会いや思い出を思い出しさらに涙を流していると
「もう止めよう…早くメアリーを綺麗にして眠らせてやろう」
ゾーイは信じられないほど軽いメアリーを持ち上げると
「メアリーの子供の頃を思い出すな…」
愛おしげに髪を撫でる。
「メアリーを綺麗にしてくる…イーサンは埋葬する準備を…」
イーサンは力なく頷くと雨の中外に出ていった…
ゾーイは風呂場に行くとメアリーを横たえ優しく水で洗っていく。
「ごめんよ…冷たいかな、でも今はお前の事だ温かい場所で楽しくしているよな…いや、楽しくしていなきゃ困るよ…」
体の汚れを取ると腕や足に沢山の痣が出てきた…汚れていた時にはわからなかったがどうやら日常的に暴行を受けていたようだ。
しかし体をよく見るとお腹の部分には一切痣が無かった…
「メアリー…お前赤子を守っていたのか…」
お腹を庇うように叩かれるメアリーの姿が浮かびまた涙がこぼれる。
ゾーイはメアリーを隅々まで綺麗にしてあげると
「お前がそこまでして守った子を助けられなくてすまない…どうか天で子供と幸せになっていることを願うよ…」
ゾーイはメアリーを優しく拭くと髪を乾かし梳かしてやる。
長かった髪を綺麗に切ってやり、軽く化粧を施すと前の面影が見える。
メアリーの為にと用意しておいた一番いい服を着せるとちょうどイーサンが戻ってきた。
「メアリー様が一番好きだった場所に向かいましょう」
イーサンの言葉にゾーイは頷いた。
イーサンが綺麗なメアリーの姿を見ると目を潤ませる…
「もう一度…メアリー様にお会いしたかった…」
メアリーの手を握りしめるとそっと甲に唇を当てる。
そしてメアリー様が濡れないように布を被せて優しく抱き上げゾーイと見晴らしのいい高台に向かった…
二人で小屋から近くの高台に向かっていると雨も上がる…イーサンが深く掘った穴には沢山の花を引き詰めてメアリーを寝かせた。
布を顔にかける前に二人はメアリーに語りかける…
「どうか安らかに…」
「メアリー様…」
美しいメアリーに布を被せると上からそっと土を被せる…
今までずっと降っていた雨がやみ月まで出てくるとメアリーの眠る場所を月明かりが照らした。
「必ず隣にお子様を連れてきます…それまでここでおやすみください」
イーサンは誓うように胸に手を当て膝をつき祈った。
「月の神よ…どうかメアリーを哀れだと可哀想だと思うならこの子達を導いてやってくれ…メアリーと赤子にどうか次は幸せを与えてやってくれ…」
ゾーイは美しく輝く月をじっと見つめていた。
メアリーを埋葬するとイーサンはまた屋敷に戻る為に馬を引いてきた。
「では、ゾーイ様次に来る時はメアリー様のお子様をお連れします」
イーサンが頭を下げると
「お前はまだあそこで働くのか?」
ゾーイが心配そうにすると
「はい…メアリー様を救えなかった罰です。あの男の元で働いていつかその証拠を掴んで見せます」
「もうメアリーはいない…お前は好きな様に生きていいんだぞ」
ゾーイの優しく言葉にイーサンは首を振ると
「無理です。どんなに幸せになったとしても楽しい事があったとしてもメアリー様を忘れられない…その瞬間どんなに幸福な事も褪せてしまう」
イーサンはこの罪を一生背負っていくつもりだった。
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