第32話 ANOTHER HEAVEN その10

「じゃあじゃあ!! あたしは薫と花愛の三人で明日チューチューランドに行きたいぞー!!」

「んなっ!? わしは行かんぞ!! あんな人ばかりのゴミゴミした場所は!!!」

「えー!! 三人でチューアイス食べようよ!!」

「嫌じゃ嫌じゃ!! だいたいなんで明日も寒いのに、アイスなんか食べなければならんのじゃ!! わしは嫌じゃからな!!」

「えー!! 絶対楽しいよ〜ねっ、薫!!」

「あっ、あぁ」


 比較的、優しい要求に胸を撫で下ろす。まぁ、入場料から何から何まで俺が払うことになるんだろうが……まぁそのぐらい、耐久ゲーム缶詰や、命を伴う実験に比べれば安いものだ。


「なるほど、なら、あたしが薫、あんたを手に入れた際には……どうしようかしら? なんでもしてくれるのよね?」

「あぁ、どうやらそういうことらしい」

「自分のことなのに、随分と受動的なのね」

「俺に拒否権はないようだからな」

「ない、わけではないと思うのだけど……もしかして、そういうのが好きだったりするの? あなた」

「誤解をしているようだから、言っておくが俺はどちらかと言えば!! S寄りな人間だ!!」

「……そんな嘘、ついてどうするつもりなの?」

「嘘じゃない俺はーー」

「はーい、じゃあ私が井上君をゲットしたなら、明日は一日飲みに付き合ってもーらおっと」


 静ちゃんが背中から俺に抱きついてくる。

 

 かなり、お酒も進んでいる様でさっきよりもだいぶ酒臭い。


「静ちゃん、俺、一応未成年なんだけど!!」

「あーら、実質もうあたしより繰り返した年数数えればあたしより遥かに歳上でしょ? 井上君は」

「あのねー!! そうは言っても精神的な歳は重ねてるけど、実年齢はーーって!! さりげなくメタ発言をしないでほしいな!! 静ちゃん!!」

「アハハーめんご、めんごー」


 一切、悪びれる様子もなく静ちゃんが俺に形だけの謝罪の言葉を並べる。


「じゃあ、あたしが薫を取ったら〜時間旅行でも一緒にいっちゃう?」

「それは、冗談か? それとも本気か? 由梨」

「んー? どっちだと思う」

「……本気でないことを祈る」


 そう言った俺の発言を聞いて、由梨が嬉しそうに笑う。


 そもそも、静ちゃんといい、由梨といい、本来ならこの場にいないはずの人間……。


 そうか、花愛ことクロノスもか……。


 なんだか、今回の周回は不思議なことばかり起こる。


 まるで、オールスターを集めての最後のお祭り回のようなーー。


 まさか……今回でどうにかしなければ終わってしまうのか……俺の力も直の力もいずれは消滅するものだと……いつぞやの周回でクロノスが散り際に言っていたが……。


 まさか、そんな……それが今回、だとでも言うのか?


『何を今更、動揺しているんだ? この愚弟』

『のわっ!? 心の声にまで干渉してくるな!! 誠二!!』

『とは言っても、あんまり言葉ほど驚いてねぇみたいだな、義弟君』

『誠一さん、あなたたち兄弟の心の中での干渉は初めてじゃないんですよ……』

『おいおい、俺たちは義弟君と初めてコンタクトが取れたと思っていたのに、まさか初めてではない、なんてね。ちなみに初めての時はどんな時だったんだ?』

『ノーコメントで』

『何がノーコメントだ。さっさと吐けこの愚弟」

『るっせぇな!! 年齢でいうなら俺のがちょっと上なんだよ!! お兄ちゃん』

『お前のようなやつが! 僕をお兄ちゃんと呼ぶな!! 気味が悪い!!!』

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