第30話 ANOTHER HEAVEN その8

「まっ、待ってくれ!!! 直ぐに、直ぐに用意する!! 30分! いや、10分! いや、贅沢は言わない!! 5分だけでもーー」

「いや、ダメだ。プレゼント交換は当日、この瞬間までに用意しておかなければならないんだ」

「そっ、そんなの誰がーー」

「私だ」

「っへっ?」

「私がそう判断し、私が決めた」

「だっ、ダブ◯タクソ親父かよぉぉぉぉ!!!!」

「いいえ、直は女の子だからダブ◯タクソお袋ね」

「そういうこと言ってるんじゃないんですよ!!」

「そうだぞ!! 私は、カオルをお腹を痛めて産んだ覚えはないぞ!!」

「そうじゃねぇよ!!!」


 まっ、まずい。ツッコミが追いつかない。


 このボケの嵐とも言える事態に、俺1人でそもそも対応できるはずがーー。


「話戻すけど、プレゼントないのは薫だけってことでいいわよね?」

「ですです!!!!」


いつもは、話をあっちへこっちへと脱線させる姉妹が既定路線へと軌道修正をしていく。


 っくそ!! もう少しでなんとかなぁなぁに出来たかも知れないのに!!!


「いやーでも、井上薫にだけ教えずみんなで仕込むの楽しいなぁ!!」

「バカ、愛花!! 主は、余計なことを口にーー」

「俺には教えずにー?」


 わざとらしく、ネ◯ロの異常な謎人間のように思いっきり背中を反り、愛花、花愛コンビの方へと顔を向ける。


「うっわっ!! 気持ち悪っ!!」

「近づくな、このウツケが!!」

「おいおいおいおーい!! 俺には知らせないでー みーんなだけでー決めたこと、なのにー!! 俺に罰を与えるのはーちがくなーい?」


 精一杯うざい言い方で、みんなへと訴えかける。


 愛花がバカで助かった。自ら墓穴を掘るような発言をするとはな。


 さて、どうする? 直?


 公平を実は何気に大事にしているお前にとって、今の俺は不平等だ!!


 確かに、その事実を知らなければかなり理不尽ではあるが、俺が、たまたま、あり得ないことではあるが、来ていた連絡を見逃し、この時間を迎えた……それなら、まだ俺のミスとして罰も甘んじて受けよう……。


 だがーー!!!!


「なぁー? 直、これは明らかに俺に不平等だよなー!!!」

「っぐ……確かにーーそう、かもな」

「直……」

「星奈、みんな、すまない。作戦は失敗だ」

「さて、直、俺にあらぬ罰を下そうとしたんだ? 何か言うことあるよな?」

「……すまん」


 直が俺の目の前にやってきて、形式的に頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「すまん? あれー? お前らの手違いで罰を与えられそうになったのにそれだけなのかー?」

「ちょっと! 薫、直は謝ったでしょ!! あんま調子にのるとーー」

「乗るとどうなるんだ? 清美」

「なっ……」

「まさか、一方的にそちらが悪いにも関わらず俺に暴力を振るおう、なんて考えてないよねー?」

「ぐっ……」

「井上先輩、酷いです……ひどすぎまーー」

「おーっと!! 晴美ちゃん!! お得意の泣き脅しだって今の俺には通用しないぜ!! 何故なら、俺の非は100%ないからなぁ!!」


 いつもの俺なら、この晴美ちゃんの涙で場を納めていたが、甘かった。


 俺のその極度の甘さが、みんなに盛大にハメてやろうという意思を生ませてしまった。


 ここは、未来のハーレム王としての力をここに改めて示しておかねばなるまい!!!

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