第26話 ANOTHER HEAVEN その4

「あーら、ウイスキーボンボンをバカにしちゃダメよ。他のアルコール飲料と比べて低いとは言え、洋酒なんだから、お酒に耐性がない人が食べれば立派によっーー」

「解説ありがとねー静ちゃん。でもね、そんなことまでわかっていて、なんでウイスキーボンボンを差し入れに持って来たのかなーー!!!!」

「だだだだーってぇ……まさか、倉沢さんがこんなにお酒に弱いなんて知らなかったんだものぐすん」


 俺の少し圧のある言い方に、静ちゃんはしっかり萎縮してしまい、小さくなってしまった。


 まぁ、泣き真似をするような余裕はあるようなので、特に気にかける必要はないだろう。


 と、言うよりも……。


「きよみーはやくわたしをころしにいらっしゃーい!!!」

「ナオ、あたしはお前を殺す!」

「デデン」


 ……地獄絵図だ……晴美ちゃんまでもがただのデデン効果音機となってしまった。


 つか、この生徒会アルコール耐性無さすぎるやつ多すぎるだろ!!!


「薫〜」


 星奈さんが、寄り掛かるようにして俺に抱きついてくる。


 そして、星奈さんの吐く吐息にもやはりーー。


「星奈さんも、食べたんですね。ウイスキーボンボン」

「あーん、薫〜私、酔っちゃったみたいなのよー……だーかーらーうふっ」


 星奈さんが、一つまた一つと制服のボタンをーー。


「星奈さん、今、フリですよね?」

「……どうしてわかったの?」

「お酒の勢いと称して、セクハラ行為する気満々だったのバレバレだからですよ!! ってか、星奈さん、静ちゃんのビールも少し飲んでますよね!!」

「飲んでないわよ」

「そうだ! そうだ!! 私が神楽坂に分けたのはシャンパンだぞー!!!」

「どっちにしろ!! 未成年に酒飲ましてるんじゃないよ!! このダメ教師!!!」

「ダメ……おろおろ、静ちゃん傷ついちゃったなぁ……おろおろ」


 静ちゃんの安い三文芝居に付き合っている暇はない……今は、とりあえず無事な星奈さんと他の人間の確認を……。


「おいっ!! 紅音!!」


 酔っている直に、名指しされ紅音がゆらりと立ち上がる。


「おっ、おい……紅音、お前、まさかーー」

「なーによぉー!! 直ぉー!!!」


 やっぱりかぁ!! お前もボンボンにやられたのかぁ!!!


「わらしは、あんたに決闘を申し込むわぁ!!!」

「望むところよぉ!!!」

「おいおい待て待て、決闘ってーー」

「両者、同意と見ていいわね」

「はぃぃぃ!?」


 いつの間にか、金髪のウィッグを被った星奈さんがノリノリで2人を煽る。


 いや、まさかこれーー。


「水◯の魔◯のパロやる気かよぉぉぉ!!!!」

「さっそく、両者、宣誓よー。直、あんたはこの決闘に何をかける?」

「この後の薫の予約だ」

「なるほど、紅音、あんたはこの決闘にーー」

「言うまでもないわ!! 私も薫の予約よ!!」

「おっ、おっ、俺の予約ー!?」


 って、まさかの俺がスレ◯タもしくは、ミオミオポジかよ!!!


「その決闘ちょーっと待った!!」

「……清美、順番よ。まずは私が紅音を倒す! 清美お前との決闘はその後だー!」

「んなっ、なめられたものね!! 私が直、あなたに負けるというの?」

「えぇ、だって、私とこのナオリエルがおまえごときに負けるはずないのだからな!!」


 そう言って、直が自作の紙相撲を取り出す。


「って!? 紙相撲!!」

「それは、私のアカネバルデを倒してから言うのね!!!」


 そう言って、紅音も自作の赤く塗った紙相撲を取り出した。

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