第25話 ANOTHER HEAVEN その3
「花愛!! 花愛!! これ、なんだ? なんだ?」
「落ち着け、愛花……何ってただのローストビーフじゃない……」
「ローストビーフ!? ローストビーフって何だ!! なんなんだ? 花愛!!」
「あーもーうっさいやつじゃのう!! 食べてみれば良いじゃろー!!」
「んっ、たしかにそれもそうだな。そんじゃ、パクッ、んー!! 美味い!! うんまいぞぉ!! 花愛!!」
「だぁぁぁーー!!! 揺らすんじゃない!!」
あの姉妹も、どうやら初めてのクリスマスパーティーを楽しんでいるようだ。良かった良かった。
「なーに、ジジくさい顔して見てるのよ。薫」
「んっなっ!? 由梨!? お前また、いつの間に!! つか、最近お前は自由過ぎないか?」
「まぁ、そこは大丈夫よ。言っても、あたしの扱いが一番作者も困ってるんだから」
「メタいよ!! 外の人の話をするんじゃないよ!! それが一番しちゃいけない話なんだよ!!」
「あの……先輩、外の人ってのはーー」
「晴美ちゃんは、消されたくないならその話は今後禁句、だからね」
「えっ!? 晴美、消されるような人間じゃありませんよ!!!」
「まっ、3ヶ月近くもほったらかしにされてたあたしらってある意味消えーー」
「だーからーそういう発言は!!!」
「ふふふ」
由梨にいつものツッコミを入れようとしたタイミングの晴美ちゃんの小さな笑い声が聞こえてきて、思わずそっちの方へと顔を向ける。
「あっ、ごめんなさい。でも、先輩があまりに楽しそうだったのでつい」
「楽し、そう?」
「はいっ! 最近の先輩、どこか思い詰めた顔をしていたので……」
晴美ちゃんに言われてハッとした表情を浮かべる。
たしかに、ここ最近俺は紅音や、玲関連でずっと肩に力が入りっぱなしだったかも知れない。
こんな気楽な気分で過ごせるような日は、言われてみれば随分となかった気がする。
「なんだ? 薫、ずいぶんと楽しそうじゃないか」
直が、俺の肩に手を回し、やたらと顔を近づけ……。
「くっさっ!!」
酒の匂いにおもわず、直から距離を取る。
「くっさって……女の子に向けていう言葉ではないぞカオル……」
「あっ、すまーーいやっ、それよりなんで!! 酒なんかーー」
「みーんなー盛り上がっていくわよー!!!」
「「「「「おー!!!!」」」」」
しっ、静ちゃん!?
「なんで、静ちゃんがここに!? 新天地に行ってるはずじゃ……」
「ハァぁぁぁぁぁ!? 井上君、あなたは何を言っているの?」
ち○かわのうさぎばりの勢いのハァ!? で、静ちゃんがとんでもなくうざい顔を見せつける。
教師でないのなら、思いっきりどつきたい気分になる。
いや、それよりも、だ……。
歴史が……過去が変わっている。
文化祭が終わってすぐ、本来なら静ちゃんは、なんらかの理由で学園を去っているはず。
それは、何度もしている経験で……。
たしかに、静ちゃんが学園に戻ってくるそんな展開もなくはなかった。
だが、この直がまだ学園にいるタイミングでの静ちゃんの帰還は今回が初めてのことだった。
「静ちゃん!! いくら、なんでもありのクリスマスパーティーとはいえ、未成年の直たちにお酒を飲ますのは流石にーー」
「飲ませてないわよ」
「なんーー」
「当たり前でしょ、腐っていたとしてもあたしは教育者よ。そんな倫理観無視の行動は流石にしないわよ!!」
「じゃあ、なんで直が酒くさーー」
ふと、机に置いてある高そうなチョコレートが目に入る。
そして、そこで俺は事態を一瞬で理解した。
「ウイスキーボンボン程度のアルコールでここまで泥酔するのかよぉぉぉ!!!」
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