第22話 あなたの選んだこの時を ラスト
「……そんな、強がりいつまで言えますかね……」
そう言うと、玲は俺たちの前から去っていった。
「終わった……んですよね?」
「あぁ、みんなお疲れ様! さーて打ち上げと行こうぜ!!」
その日、生徒会で行われた打ち上げは大層派手なものだった。
学校でできることの範囲内で散々好き勝手やってその日はそのまま解散となった。
「いやー楽しかったな。直!!」
「薫……」
「んっ? どうした?」
横を歩いていた直が突然足を止める。その表情はどこか暗く見えた。
「本当にお前は、玲をハーレムメンバーにするつもりか?」
「あぁ」
「わかっているのか!! あいつはーー」
「玲も含めて、ハッピーエンドを迎えなければ俺は、あいつに……顔向けができない」
「……あいつ……というのは、お前の知る未来の私か?」
「どこまで、察しが良いんだよ直、お前は、なんだ? この物語の作者か何かなのか?」
「茶化すな、私は本気でーー」
「悪い……それは、今は言えない」
「その言い方は、肯定しているようなものじゃないの?」
「紅音!? お前、なんで!!」
「お邪魔してごめんなさい、でも……良いわよね? 直」
「あぁ、構わん。紅音、お前が私たち2人の邪魔をするなんて初めてじゃないしな」
「きっつい言い方ね。でも、良いわ。ねぇ、薫、あんたどうするつもりなの?」
「どうするって?」
「カオリさんのことよ。彼女は間もなく消えるわ。私の中から消えた、兄さんたちのように……」
「……そっか、あの2人、お前の中からも消えたのか……ってことは、もう、完全にいなくなっちまったんだな」
「あなたには感謝してたわ。そして、期待しているとも、ね」
「こいつは、すげぇプレッシャーだな」
「……どうするつもり?」
「……どうもしない、冬が来て、また春が来て、やがて冬がくる。その時もカオリがそこにいる、そうなるよう努力するだけだ」
「だから、私はそれをーー」
「そこまでだ。紅音、カオルがどうにかすると言っているんだ、私たちはただ信じて待つだけ。それだけ、だろ?」
「……時間はないわよ。わたしはそれだけを忠告しにきた。それだけよ」
そう言うと、紅音が俺たちに背を向ける。
「あっ、それと、来年からよろしくね。直、それに、薫」
「あぁ、紅音、お前が来ること私は楽しみにしているぞ」
「ふふ、じゃあこれ以上はお邪魔せず、わたしは帰るわ。またね。2人とも」
そう言って、紅音は俺たちの前から立ち去っていった。
「……雪、降りそうだな……薫」
「あぁ、もうすぐ冬が、来るんだな」
それは、毎年のようにやってくる雪の季節。
そして、カオリが消える季節。
その季節の到来は、紅音の言うようにもう、目の前に迫っていた。
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