第17話 いつかこの場所で ラスト
「……私には、もうわからない何かがあなたたちには見えている……そういうことで良いのかしら?」
「まぁ、そういうことだ。中々物分かりが良いじゃないか、紅音」
「あなたたちの言うこと、不思議と信じられるのよ……まっ、それもそうか。あたしも、もう二人とこうして知り合うのが何千、何万回目? なんでしょ?」
「あぁ、もう数えることすらしてないからはっきりとした回数はわからないがーー」
「薫、あなたが女の子との出会いをカウントしなくなるなんて本当に他方もない数を過ごしているんでしょうね?」
「あぁ、でも、そのどれよりも今回の紅音が一番魅力的に感じるよ」
「安い、ナンパ文句ね」
「違いない」
紅音と二人笑い合う、こんなことは何度もあったはずだった。でも、そんなことすらできない時もあった。
ずっと、二人、涙をひたすら流す……。
そんなこともあったからか今、こうして紅音と笑い合える時間をすごく幸せに感じている。
「私の前で、いちゃつくとは良い度胸だな、薫」
「なんだ? 直、ヤキモチか?」
「あぁ、ヤキモチだ。私にヤキモチを妬かせたんだ、覚悟は良いな? 薫!」
「わっ! ちょ!!!」
「ちょっと!! 直!!!」
直が俺たち二人に急に抱きついてきた。
直と、紅音、そして俺の3人だけで過ごす。
こんな時間は本当に少なかったからとても嬉しく思える。
『なぁ、カオル』
『なんだ? カオリ?』
『……今のお前になら言ってもいいな、俺は今年中にお前の中から消える……』
『あぁ、わかっている……』
『大丈夫か? なんて、聞くのは余計か?』
『……文化祭』
『?』
『お前も精一杯楽しんでくれカオリ』
『……あぁ、そのつもりだ! 遠慮しないで暴れるつもりで楽しむから覚悟しろよな! カオル!!」
カオリが眩しいくらいの笑顔を浮かべていた。
別れの時は近いが……こうやって最後まで笑っていたい。
けっきょく、いつも俺は泣いてしまうから……。
それだけ、俺はカオリとの別れが辛いから……。
「と、言うわけで今年の文化祭! 生徒会は、創作劇を生徒会室でやることに決定だ!
「あのー……会長さん」
「なんだ? 晴美ちゃん」
「あの配役が、一人多い気がするんですが……」
「たしかに、一人多いわね」
「直、これはミス? それともーー」
「紹介しよう! 今回の生徒会主催の劇を手伝ってくれることになったーー入ってきて良いぞ!」
「なっ!?」
「えっ!!」
「まぁ!!」
「……長月紅音、風紀委員長だ!!」
「初めまして……というのは、おかしいわよね。改めてよろしくお願いします。生徒会の皆さん」
「ちょ、ちょっと、井上君、どうなってるの? 何で、風紀委員が生徒会にーー」
「星奈さん、みんな聞いてくれ!!」
「せん、ぱい?」
「薫?」
「良いよな? 直」
「あぁ、薫、お前の口から言ってやれ」
「……みんな、実はーー」
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