第15話 いつかこの場所で その8
「やはり……紅音と、お前たちは本当の兄妹ではないんだな……」
「それを、お前さんが言うか? なんで、カオリと一緒にいるんだ?」
「やはり……あんたたちはカオリを知ってるんだな?」
「あぁ、俺と誠二、カオリ、そして静奈と……」
「鞠奈ちゃん……か」
「本当に、何でも知ってるんだな……」
「話せば、長くなる。だから、省略させてもらって良いか?」
「あぁ、今更そんなこと気にするつもりはない」
「それで……」
「再婚してるんだ……紅音の父親と俺たちの母親は……そして、気付いてるだろうがお前の育ての母親、そして倉沢夫妻、そしてーー」
「直の本当の父親……つまり、【尾張世界】(おわりせかい)【玲】(れい)の父親は昔関わりがあった」
「……同級生……だったそうだ。真面目な、尾張は後の倉沢直の母親となる、【古瀬沙羅】(ふるせさら)に騙され、たかられ、そして利用された……」
「その復讐のため……直が巻き込まれている。だが、直はそんな尾張の人間すら犠牲にしたくないと言っている……自分が、犠牲になったとしても……」
直は、そういうやつだ……誰かが不幸になるくらいなら率先して自らが不幸になることを選ぶ。
それが、倉沢直という人間だ。
何度繰り返しても、何度救おうとしても……するりと手の中からこぼれ落ちていく。
あの笑顔を、俺は忘れることができない……。
あんな、悲しい笑顔を……。
「だから……君は、自分が傷つくことも構わずにたったひとつの答えを探し求めている」
「そう! あたしの力を借りて、ね!」
その空間に突如、由梨が現れる。
こいつの神出鬼没具合に関しては、もはや何も言うまい。
「おー! なんだ? あんたは? こんなに可愛らしいーー」
「つまらないお世辞はいらないよ。長月のお兄さん」
「おー……中々厳しいねぇ……」
「薫、それで収穫はあった?」
「まぁ、そこそこって感じ、かな」
「悪かったな、役に立たなくて」
「拗ねるなよ! 弟!!」
「拗ねてない!! それに僕はーー」
「時間……だね」
由梨の言葉と同時に、二人の体が透き通っていく。
「そのようだ、な……後悔はない。井上薫、紅音のこと頼んだぞ」
「いまだに、不服ではあるが……君になら、紅音を任せられる」
「ありがとう、誠一さん、誠二さん」
「なっ!? こんな時だけ……」
「……落ちたのか? 誠二?」
「そんな、わけーー」
「絶対に! 絶対に……紅音は幸せにする!! ハーレムメンバーを俺は絶対に悲しませない!!」
「……でも、全て終わった後はーー」
「その話は! 今は良いだろ?」
「……そうだな」
「玲に関しては、僕たちも少しなら干渉できる……はずだ……」
「俺たちのできる、唯一の反抗だ……これ以上、尾張のやつらに好き勝手にされてたまるかよ」
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