第10話 いつかこの場所で その3

「……話が見えないな。で? お前さんはどうしたいんだ?」

「俺は……直を、そいつから救いたい……」

「直? 倉沢直のことか?」

「……俺は……俺はもう見たくないんだ……何度も何度も見てきた……あいつの……直の寂しい笑顔を……」

「青い青春ごっこなら、勝手にやってくれ!! 紅音を巻き込むんじゃーー」

「その結果!! ……紅音の笑顔が曇ってもか?」

「!? どういうことだ!! 何故、貴様と倉沢直の関係で紅音が関わってくる!?」

「……それが……お前さんが、紅音の……俺たちの母親について知りたい理由に関わって、くるのか?」

「……少なくとも、俺の中にカオリが生まれた理由を知る手がかりになるはずだ」


 俺は、二人に手のひらに黒い渦巻きのようなものを作り出して見せる。


「これは?」

「俺の力……全てを否定し、無理やり終わらせる力だ……」

「なっ!?」

「世界の終わりの力……ってことか?」

「そうだ……俺には、終わらせる力がある。だが、それに反する力、全てを消去して、初めから作り替える力……それが、倉沢直の力だ」

「お前さんと、倉沢直で終わりと始まりを司る力があるってこと、か……」

「兄さん!! こんなやつの戯言を信じるのか!? あり得ない、世界の終わりと始まりを2人の人間が司っているなど!! おこがましいにもーー」

「そして……そんな世界の中で唯一、ねじ曲げ、改変する力を持つものがいる……」

「……終わりと始まりすら、か?」

「……やつの存在を終わらせる、ことはできる……だが、それじゃダメなんだ……そんなことをしても直は……また新しく作り出してしまう。俺たちにとっていくら不利益な存在だとしても、直は……あいつは生きる存在そのものを否定することを拒むんだ……」


 あいつは、直の負の元凶の……男の息子……。


 倉沢夫妻とは、異なる、真の……血のつながりのある関係……。


 あの男が、いくら直を苦しめようとも……。


 あいつが、どれだけ直を泣かせようとも……。


 直は……その存在だけは否定しない。


 俺が終わらせようとしても……それを否定する……。


「だから……俺は、知らなければならない。あいつの……あの男の力の根源……改変する力が何故、生まれたのかを!!!」

「……それがわかるとどうなる?」

「……俺がその力を手に入れる……そして、終わらせる力と共に、直の……俺たちのハーレムを終わらせる」

「なっ!? 何を言っている!! ハーレムはお前自身の生きる目的だったのではないのか!!」

「俺のハーレムが……俺と直が……みんなが関わる限りこの連鎖は断ち切ることはできない。だから、俺自身が終わらせる。それが俺の真の願いだ」

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