第5話 あなたの選んだこの時を その5
「直、そろそろ本題に移りましょ」
「あぁ、非常に、面倒だが、仕方ないか……」
直が頭を掻きつつ、ホワイトボードに何かをでかく書き始めた。
「ぶ・ん・か・さ・い・に・つ・い・て・?」
愛花が、不思議そうな表情を浮かべる。
「なるほど……懐かしい響きだな、文化祭」
「懐かしい?」
「いや、なんでもない。気にするな、愛花」
「うん! わかった!!」
「あーそっか、もうそんな時期なのねー」
「晴美もすっかり忘れていました」
「文化祭……か……」
「そう、なんだかよくわからないが。なんでも今年は蒼海学園始まって、ちょうど99回目の文化祭のようでな」
「100じゃないんだな」
「だーから、学校的には記念すべき100回に向けて前年の今年から盛り上げたいから生徒会で何か案をだして欲しいって、頼まれてたってわけだ」
なるほど、学校側からの頼みということは本当に久々に悪ふざけのできない、真面目な議題ってことになるだろう。
「じゃあ、早速何か意見ある人は手をーー」
「ゲーム大会!!!!」
「格闘大会!!!!」
「校内ライブ!!!」
「失楽園」
「動物園!!!!」
ほぼ、同時に全員立ち上がり、各々勝手な主張を始めるが……。
わかってはいた……わかってはいたが……
馬鹿ばっか!!!!!!
「待て待て待てぇぇぇい!!」
「どうした薫?」
「どうしたもこうしたもねぇ! いつも通り一切ブレなさすぎてマジびびったわ!!!!!」
「何かおかしいですか? 先輩」
「そうだね、晴美ちゃん。そもそも、おかしさしかない!!!! まず、堀部姉妹!!!!!」
「「はい(です)」」
「学校は、ただ意味もなく遊んだり、戦ったりするような場所じゃない!!!!」
「「!!!!!!!!!!」」
「却下! 座れぇぇい!!!」
二人がシュンとなって、肩を落とし席に座る。
「おい薫、勝手に進めるな会長はわたーー」
「直! なんだ、そもそも校内ライブって!!!!」
「ふっ、それはもちろんスクールアイーー!!!!」
「うちの学校にはいない!!!」
「!!!!!!!………」
「まず、穂○果ちゃんか、千○ちゃんか、ゆ○ちゃんか、か○んちゃんになってから出直せ! 却下だ!! 座れぇぇぇい!!!!」
直もシュンとなって、肩を落とし席に座る。
「星奈さん!!!!」
「何かしら?」
「文化祭を行うのは、学生です! 学生ができることにしてください!!」
「あーら、高校生なら充分にーー」
「できるできないの話じゃなくて、学祭ってこと考えろってことだよ! 却下だ!! 頭ピンクは座ってろォォォい!!!」
「……罵倒する、井上君も悪くーー」
「座れぇぇぇい!!!」
星奈さんが何故か、ほんのり頬を赤らめながら席に座る。
えっ? なんか反応が思ってたやつと違う!?
「そして、最後、愛花!!!」
「なんだ!!」
「馬鹿!!!!」
「ばっ……馬鹿……」
「却下だ! 座われぇぇぇい!!!」
愛花の代わりに、花愛が愛花の肩に手を置きゆっくりと席に座わらせる。
「では、聞くが……そもそも、薫は何か良い案があるのか? あるのかよ! おいっ!!」
直が半ば、やけくそ気味に俺に話を振る。待ってましたとばかりに俺は、胸を張り立ち上がる。
「ふっふふ、もちろんだとも!! それはーーー!!!!」
「あっ、ハーレム関連はもちろん却下な」
「水着大会もダメよ」
「メイドコンテストとかありえないからね」
「着物美人決定戦とかもなしですからね」
「あっ、水族館はダメか?」
「……美術展示会とか、どうだろう?」
「なっ……」
「座れ、バカアホ世界一のクズ男」
「ごはぁっ!!」
俺は、崩れるように席へと座る。
いや、待てさっきの明らかに言い過ぎじゃないか?
「やはりか」
「やっぴりね」
「お見通しよ」
「学習しませんね」
「あっ、遊園地わ!!!!」
「……書道大会とかは……ダメだろうか?」
「あーん、もう、あなたたち双子は違った方向で相変わらず可愛いわね~」
「んっ? なんであたし星奈に撫でられてるんだ?」
「ばっ、離せ! そんなに、触れるなぁ!!」
「気にしなーい、気にしなーい」
「むむむ、妹兼萌ポジの晴美の立場がいつも以上に危うくなっている気がします……これはーー」
あーなるほど、これ、案外キャラ被りが起きることも考えられるのかー。
まぁ俺的に、愛花は運動系可愛い後輩。花愛はツンデレ系優等生系可愛い後輩。晴美ちゃんは文化系可愛い後輩。
と、ばっちり別カテゴライズできてはいるんだが…。
なるほど、可愛い後輩という大きなカテゴライズでは被りが起きるくらいにはキャラ渋滞が起きているのか……。
「まぁ……時間はまだあるし、今日、話して結論出さなくてもーー」
「だよな!! 薫!!!!」
しまった、直に余計なスイッチを入れさせてしまった。
水を得た魚みたいに生き生きと目を輝かせるんじゃない!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます