読了後、もう一度最初から読み直したくなったこの作品。恋のキューピットはいつも顔で笑って心で泣いてだよなあ、なんてありきたりな物語を想像して読み始めたのですが。
「主人公は失恋するのだろう」と感じさせる一文で始まります。だけど、読み進めると先入観通りのお話ではなくて。
親しい先輩と付き合う事になった親友が、引き合わせてくれたお礼として焼いてくれるアップルパイには思い出が折り重なり、二人のやり取りは今までずっと親友だったのだと実感させられる息の合い方で。
この関係が変化してしまうのは、ただただ惜しいと思えてしまうほどに。
最後の一行に、苦しさと生々しさがあってドキリとさせられました。
読み切ると主人公の視点を追いかけ直したくなり、もう一度最初から読みたくなる。そんなお話です。