唯一の衛星の秘め事

俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き

唯一の衛星の秘め事


―――――月。


その星は実に不思議な星だ。


我々が住む地球の唯一の衛星。


想像が付かないくらい昔から地球の周りを回り続ける彼女には、秘密がある。


地球が太陽の周りを回っているということは、皆知っていると思う。

この太陽系唯一の恒星である偉大なる母。

太陽の周りを地球は一年をかけて公転しているのだ。


太陽というのは常に同じ面を向けているようで、本当は様々な顔を我々に見せてくれている。

黒点と言われる太陽にある黒い点の位置の違いなどから、それは確認することができる。


地球は常に太陽に憧れていた。

光と熱を生み出し、我々の生きる所以を生み出したその恒星に恋い焦がれ、ずっと追いかけていた。


だが太陽が地球だけを見ることはなかった。


太陽系には水金地火木土天海といわれるように、複数の衛星があり、その全てに平等にその熱量と愛を届けなければならないのだ。


たかが一惑星である地球を選ぶことなんて、できない。


地球は悲しんでいた。

ずっと。我々の想像の付かないような昔から、その母なる星に恋い焦がれていたのだから。


たまに彼女を怒らせて、氷河期になることもあった。

ときには近づきすぎて怒られてしまったこともあった。


それでも、地球は太陽に憧れ続けていた――――













―――――地球が太陽の背中に涙をこぼしたそのとき。

それと同時にとある星も人知れず涙をこぼした。


その星は、我らが地球の唯一の衛星である月であった。


月は夜にのみその姿を表す。


我々人類はその存在に古来より惹かれ、歌に詠んだり絵を描いたりなど、様々な方法でその美しさを比喩してきた。


地球に火星大の星がぶつかったことによって生み出された彼女は、その元となった地球を兄のように慕っていた。


常にそのそばから離れず、ずっとその周りを回り続けた。

潮の満ち引きを手伝ったり、陰ながらアピールもしてきた。


だが、地球は振り返ることはなかった。


彼はずっと太陽に恋い焦がれ、その周りを回っているのだから。


月はそんな彼を今もずっと愛し続けている。

その証拠に、彼女は地球に姿を見せるときは常におめかしをしていた。


月が地球の周りを回っていることは広く知られている。

がしかし、月が見せている面が常に同じということは意外と知られていない。


月はずっと地球に同じ面を見せ続けている。


月にはクレーターというものが多くある。

ボコボコとしたそれは無数に存在し、我々を魅了してきた。


彼女は自分のそんなクレーターが嫌いだった。


ボコボコとしたそれをコンプレックスとして消したいと思っているのだ。

だから、月は地球に同じ面しか見せないのだ。


月が我々に見せない裏側には、とても多くのクレーターがあるから。


月は恋敵である太陽を恨んでいるのだろうか。

皮肉なことに月が輝けるのは太陽のおかげなのだが。


我々が見上げる空。我々が生きるこの太陽系。

そこには無数の星があり、それぞれがそれぞれに何らかの思いを持ち、移り変わっていく。


短命な我々には止まって見えるかも知れないが、彼らは常に変わっている。


新たな星が生まれることもあれば、人知れず消えることもある。


我々の住む地球だって、いつ崩壊を迎えるかは誰にもわからない。


そんな愛すべき不器用な彼らのもとで、今も生きているということを、我々は忘れてはならない。

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