相棒はわかりやすい


「人間じゃない?」


(うん)


「ははは!何処を見ている!」


「…っと」


 戦闘狂グリーズランドが踏み込んできて双剣を振るい、それを聖剣アカネで受ける。


 双剣から次々に繰り出される斬撃は速いだけじゃなく、一撃一撃がやたら重い。


「はーはっははははは! 」


 そしてデカイ声で笑いながら双剣を振り回姿は獣そのものだ。


「じゃあアレの正体は獣人か何か?」


 それなら納得もいく。


(うーん…そんないいものじゃないよ)


 アカネが首を横に振るいながら否定する。


「それじゃ…っと」


 双剣を防いでから隙だらけになった脇腹に蹴りを入れる。 しかし少し後ろへ下がるだけで殆んど効果がなかった。


「…おい貴様、さっきから誰と話をしている?」


 戦闘狂グリーズランドが構えを解き、不機嫌そうに此方を睨みながら質問してくる。


 誰と…………イマジナリー幼馴染み?

 聖剣アカネは幼馴染なのかって? アカネは元茜でこんなに可愛いのだから幼馴染みに決まってるだろ。しかし…


「別に誰でもいいだろ?」


 それをどう説明すればいいかわからない…。


「は、悠人」


 桜花がおずおずと話かけてくる。


「大丈夫か? 手伝いとか、その…」


 凄く手伝いたそうにソワソワしてる…。


「……いや、問題ないぞ」


「そ、そうか…」


 しょんぼりする桜花。 ごめん、でも俺が帝都ここにきてやったことってアカネを甘やかしただけなんだ……だから少しだけ働かせて下さい、お願いします…。


「………」


 こんなやり取りをしてる最中も戦闘狂グリーズランドは何も言わず待っていた。

 獣にしか見えなかったが意外と我満強いな…流石将軍。 凄い形相で睨んでるけど…。


「そろそろいいだろう、構えろ勇者ハルト」


「……仕方ない、他の奴に逃げられても困るし少し勇者特性を使うぞ。 直ぐに終わらせやるから後悔しろ」


 身体能力の向上なんて魔王戦以来だな。


(悠君がんばっ)


 アカネの緩い応援で倍の1000万パワー!(途中計算は全て無視)


「抜かせぇっ!」


 斬り込んでくる戦闘狂グリーズランドの双剣を聖剣アカネで弾いて、一歩踏み込み下から顎を殴る。


 やっぱり先程より余裕で捌けるな…卑怯だなんて思うなよ、お前は俺を勇者と呼んで戦いを望んだんだ。


「っ!? ……ふん、さっきから手足でしか攻撃してこないではないか。 何だ、人間は殺せないとでもほざくつもりか?」


「いいや全然。 寧ろお前が人間ならもう死んでるはずなんだが」


 俺は頭部を吹っ飛ばすつもりで殴ったし。

 まあ少し驚いてただけで、頭部どころか顎すら無事のようだけど。



 ――――――――――


(桜花視点)


「強い…」


 あのグリーズランドという男、驚いたことに悠人と普通に戦っている。 悠人は多分まだ本気ではないようだが…相手はどうか分からない。


 悠人は双剣を防ぎながら反撃するが、グリーズランドの方はその反撃を喰らっても平然として攻撃を続けていた。


 悠人の聖剣とグリーズランドの双剣がぶつかる度に激しい音をたてて火花が散る。


 うずうず………っは?! いかんいかん、悠人に手伝いは不要と言われたんだ……うずうず



 暫く通路の壁や扉を破壊しながら(近くにあった美術品は既に全滅している)戦っていた二人だが、悠人の横薙ぎに対して防御姿勢をとったグリーズランドが防ぎきれずに壁を破壊しながら大きく後方に吹き飛んだ。



 それを追いかける悠人。私もいい加減邪魔な荷物二人を持って追いかける。


 …忌々しい、悠人が止めなければ刻んでやっていたものを。

 そう思いながら荷物ゴミ供を睨む。


 悠人達の功績に嫉妬し私達を…人間そのものを裏切った外道と、平和に暮らしていた家族を引き裂き少女達を穢し続けた畜生…いや、それ以下の男。


 こんな奴等の為に私達は戦った訳じゃない。


 私達と供に旅立ち心半ばにして倒れていった者達。

 私達に後を託して死んでいった者達。

 焼かれた村で見た小さな手作りの人形。


 何故…コイツ等は…


「……」


 私の奥にどろどろとした黒い何かが溜まってゆく。 私は無意識に『飛水断ち』の柄に手をかけた。
















「桜花、大丈夫か?」


 あ……


 グリーズランドを追いかけて行った筈の悠人が目の前に立っていた。


 私は一体何を……?


「だ、大丈夫だ。 それより早く奴を追いかけよう」



 ――――――――――



 闇オチ(文字違い)










































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