魔法はいいから物理で殴れ
「破ぁぁ!」
男が腰を落として踏み込んでくる。
予想外にこのアルケインと名乗った男は強かった。スピードも膂力もあり、見た目と違って中々の
エミリアが野生のゴリラならコイツは動物園のゴリラだろうか。
………ただなぁ
「喰らえ! セブンスブレード!」
そう叫ぶアルケインから七色に光るやたら派手な斬撃が放たれる。 因みに音も凄い。凄い五月蝿くてウザい。
七色の斬撃が地面に刺さり、これはまた派手でウザい爆発が起こる。
斬撃が爆発とか意味不明な点には目を瞑って…こう…必殺技! って感じだ。
攻撃力以外は。
爆発が収まると、そこには小さなクレーターが出来上がっていた。 具体的にはスコップで一回掘ったぐらいの…。
何であれだけ派手で五月蝿いのにこんな慎ましやかな威力なんだよ!
「…フッ…どうだ? 僕の技の威力に恐れをなしたかい?」
しかもコイツ、これだけじゃない。 先程から色々な必殺技を態々名前を叫びながら撃ってくるが、どれも威力は今のやつと大差無い。
普通に剣を振る方が遥かに威力がある。
そしてウザい。
そしてもう一つ、とても困ったことがある。それは…
(悠君! あれ! あれ!)
俺の首にぶら下がってるアカネが必殺技…?を、見る度に目をキラキラさせながら指さして喜んでいる。
(悠君もいまのやって!)
えぇー…
アカネのお願いなら叶えてあげたいけど…あれはなぁ……しかもどんなに手加減してもあんな優しい威力では撃てないよ…。
桜花は『もうコイツ斬っていい?』って目で俺を見る。 桜花はちゃんと我慢ができる子だって信じてるぞ。
帝国兵達はなんか困った感じでこの戦い……戦い? を見てる。
仕方ない、桜花も限界そうだし、アカネのリクエストに答えて終わらせるか…。
多分アイツの必殺技とやらは剣を杖に見立てて、剣に魔力を込めてから撃ってるんだと思う。
つまりあれはただの魔法、ステータスを全て見た目と音に振った。
よく考えてみたら凄い器用だなコイツ…。
まあ、つまりは魔力の量を調整すればいけるかもしれない。
ええと、
(ほあー……悠君あったかい……)
気に入ったのかアカネが気持ち良さそうな顔をしている。 うん、こんなので喜んでくれるならいくらでもしてあげよう。
さて、これで撃ってみようと、俺が魔力を放とうとすると。
(…ほぁ………あ、ダメ悠君!)
…ん? どうしたんだろう?
(名前忘れてる! ほら、
いや普通に恥ずかしいよ?!
(……だめ…?)
うぐっ……
アカネが卑怯にも愛らしい瞳を潤ませて上目遣いで俺を見詰める。 これされると弱いんだよな……うーん……と、悩んでるとアカネが両手で俺の服を掴んで
(おねがい悠君)
とそれはそれは可愛くおねだりをし
「
「なっ?! その技はまさか」
七色に輝く低威力の大爆発が巻き起こる。 巻き込まれた人々は ”あ、死んだわこれ” とでも思っただろうが、爆発が収まり土埃が晴れると、その場にいた冒険者風の男とその取り巻きっぽい女冒険者、そして帝国兵達が全員倒れていた。
……全員生きてるよな…多分。
アカネは両手を上げて
(悠君かっこいい!)
と大喜びだった。 照れる。
それはそれとして
「桜花」
「あ、うん」
「宮殿まで走ろう」
「…そうしよう」
俺はアカネとコンを抱き上げて、ちょっと不満げな桜花と宮殿へ走り始めた。
――――――――――
ある意味爆発オチ
コメディさん|ONLINE
シリアスさん|OFFLINE
アルケインは冒険者ランクA-
見た目に反してかなりの努力家
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