夜営と言えば森 (後半 桜花視点)


 静かな森にパチパチと焚き火の音が鳴る。

 アカネと話がしたいので、私が火の番をするから悠人は休め…と言う桜花を説得して、かなり渋々といった感じだったが、なんとか先に休んでもらった。


 桜花のことだ、どうせ俺が寝たら朝まで起こさないだろうし…。


 少しだけ視線を桜花に向ける。 ちゃんと寝ている…よな? コンを抱いて俺の膝の上に座っているアカネを見ると、俺を見上げているアカネと目が合った。


 ……見れば見るほど昔の茜だ。

 サラサラの茶髪、優しい瞳、スッキリとした鼻……



「アカネ…色々訊きたいことがあるんだ、いい?」


(うん、いいよ。 悠君)


「まずは…――」





 ……うーん


「つまりアカネは元女神で元茜?」


(うん)


 なるほどわからん。


「でも今は茜じゃないんだよな?」


(うん、あなた達が元の世界に帰れるようになった時に離れたの)


「離れたなら元の女神様の名前を名乗れば…」


(わたし名前無いの。 ……ううん、人間だった頃の名前はあったけどおぼえてない)


 アカネは元女神で元茜で元人間← New!


(人間だった頃の記憶はないの…でも人間だったことだけおぼえてる。)


 他の人間のことだと『興味ない』で済ますけど……この子のことだと何故か気になるな、見た目のせいだろうか?


 でも今はそれより


「アカネ、茜を助けてくれて有り難う」


 ちょっとややこしいけど。


「君のお陰でまた茜と一緒に居れるようになった」


(うん。 わたしもありがとう)


 んん…?


(悠君が茜の魂を受け入れたから助けることができた……今度は二人共助けれた)


「それってさっきの話にあった?」


(うん……助けたかったの、でもだめだった)


 俺の見た目にそっくりで幼馴染みが好きな異世界グレセアの人間か、他人な気がしないんだけど…。


(あ…でも目は…)


「ストップ、その見た目で言われると死にたくなるので止めて下さい」


 俺のメンタルにダイレクトアタックにも程がある。


「それと、コンのことなんだけど…」


 アカネの腕の中で、猛烈に尻尾を振っているシーズーを見る。 俺がまだ小さな頃飼っていた大好きなコン。 首輪は付けてなくて、いつも赤いスカーフを首に巻いていた。


 俺と茜とコンは何時も一緒だった、お昼頃する時も、公園で遊ぶ時も、ご飯を食べる時も…あの頃はよく茜の家にコンと泊まりにいったり、逆に茜がうちに泊まりにきたりした。


(コンは…ずっと悠君の心の片隅に居たの。 ずっと見守ってくれてたよ)


 そういってアカネはコンを撫でると、コンは頭をアカネの手に押し付けてぐりぐりしている。


 よくわからないけど、コンの魂も俺の魂の中に居た…ということだろうか?


(コンも聖剣と悠君の魂の影響で少しだけ強くなったんだよ?)


 え、マジか


「強くって…具体的にはどれくらい?」


(しばいぬくらい)


 柴犬……それ強くなってるの…?


(ね、悠君)


「どうしたの?」


(元の世界に戻ったら…わたしを茜に会わせて)



 普通だったら理由を聞くだろうし、そもそもアカネが茜に見えるのかどうかって疑問もある。んだが…何故か俺は


「ああ、わかった」


 と答えていた。




 ――――――――――


(桜花視点)


 ………むぅ


 寝れない…


 久々の悠人との夜営。

 私が先に火の番と見張りをするからと言ったが、受け入れてもらえなかった。


 一晩中悠人の寝顔を眺めようと思ったのに……。

 交代? 何故だ?


 帝都では戦いは避けれないだろう。 当然だ、はっきり言えば殴り込みに行くようなものだし。


 奴等はそれだけのことをした、謝って済む問題ではないのだから。


 それならまず悠人の体調は万全で在るべきだ。



 …もしかして私の考えが悠人にバレたとか…ないよね?


 そんなことを考えてしまい余計眠れない…そしてそれ以上に、先程から悠人がずっと独り言を言ってるのが気になる…だ、大丈夫かな?


 ――――――――――


 次でようやく帝都。

 

コンについては守護霊的なものだと思って下さい、元々はただな低級な動物霊だったもの。

全部 女神アカネのせい。





























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