犬と女神は空気が読めない
報告の為ティセニエラ達に念話を送る。
帝国の王子(名前聞いたけど忘れた)と
まあ、異世界から召喚した勇者を同じ世界の人間が裏切った…というのは召喚した国からすれば受け入れ難い事実なんだろう。
…と、俺はこの時はそう思っていた。
援軍であるレーネ達がここに辿り着くまで、時間がどれくらいかかるかエルフレアに訪ねると。
『あと数刻もかからないそうよ。 ていうか、自分で直接訊けば?』
『嫌だ』
俺は即答した。 レーネ達と念話とか恐ろしい…。
自分の
念話を終わらせて
あれだけいた帝国兵は俺と桜花にやられたり、ガーゴイルに襲われたり、
あ、
全員武器を捨て、両手を上げて降伏のポーズをとっている。
「お前達、それは一体何の真似だ?」
俺の問いかけに兵士の一人が答える。 そいつの足元には、エンブレムのついた豪華な剣が転がっている。
コイツは貴族の令息か何かだろうか?
「み…見ての通りだ。我々は降伏する、抵抗はしない。 ほ、捕虜としての扱いを…」
…は?
コイツは本気で言ってるのか…?
「捕虜? 無抵抗の村人を殺しておいて、自分は死にたくないって? 」
そんなもの通るわけないだろ。
「お…俺は貴族だ、何かあればただじゃ…」
そう言った兵士の顔を掴んで顔を近づける。
「……それで?」
どうでもいいけどアカネが背中をよじ登ってくる感触と、コンが帝国の王子にオシッコかけてるのが視界に入ってきて色々辛い。
「俺達は魔王軍との戦争中、抵抗を止めてもお互い捕虜になんてしなかっただろう?」
何とか平静を保ちながら問いかける。
人間同志の戦争なら、抵抗を止めた敵国の兵士を捕虜にすることもあるのだろう。
だが、
「エルドニア帝国は魔王軍と通じていた。 つまりお前達は人類の裏切り者なんだ……それが一体どれだけ重い罪なのか考えたことはあるか? しかも他国の村を正当な理由なく襲った」
「それ……は」
「お前達の扱いは魔王軍と同等で充分だ、そこに転がってる帝国の王子と、
(zzz…)
寝るんだ……。
っていうか寝息が直接頭に響いてくるんだが……。
――――――――――
残った帝国兵の『処理』が終わるのと同時位にレーネ達が到着した。
「状況だけを見ると
周りの惨状を確認したレーネ達にあったことを全て説明する。 正直いきなり抱きつかれるかも…と警戒していたが、流石にこの状況でそれはなかったか。
…疑ってごめん。
説明が終わると女性陣は皆、帝国の王子や帝国兵をゴミをみるような目で見ていた。
「少し人手が足りませんね、教会とフィーリア国から人手を回してもらいましょう」
そう言ってレーネは念話を始め、セラは桜花の方へ向かってもらった。
「そういえば師匠、オウカ様は一体何処に?」
俺を師匠と呼ぶのはエミリア。 冒険者ギルドの最年少Sランク到達者、通称『雷光の勇者エミリア』。
同じパーティの仲間で、勘違いで一度戦闘になって強かったから俺が誘った。(当時はBランクだったらしい)
純情可憐なゴリラ。
「エミリアさん…貴女ハルト様の話を聞いてませんでしたの? オウカ様は被害者の少女達のメンタルケア中ですわ」
こっちはエミリアの自称ライバルのファルナ。 実家は貴族でエミリアの幼馴染み。
金髪ドリルのお嬢様口調…実在していたのか…?! …と、当時は思った。
念話が終わったのかレーネが近寄ってくる
「こちらの申請は滞りなく受理されました、直ぐにでも教会を通じて正式にフィーリア国に話がいくでしょう。 …これで帝国も終わりですね。 教会からは神敵に認定され、他の国も黙ってはいないでしょうし。」
「助かる。 …でもまだ終わってはいない」
このまま帝都へ向かい、皇帝の前で帝国の王子と
でも今のところ誰が関係者かまではわからない………ん?
俺の周りから不穏な空気を感じる……これは?!
「ふぎゃん!」
俺は体を横へずらすと、さっきまで真面目な顔をしていた筈のレーネが、目標を失って地面に突撃した。
「ぅぅ…いたた……酷いですハルト様。 スキンシップぐらい受け止めて下さいよぉ」
見ればエミリアとファルナもギラついた目で俺を見ている、だからコイツ等に頼るのは嫌だったんだ!
――――――――――
エミリアの『雷光の勇者』はただの通り名で、召喚勇者とは別物。
オルファンのは国としての役職みたいなもの。
因みにオルファンの冒険者ランクはA位。
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