……今、真面目な話してるから、ね?


 帝国の王子は何度も斬り落とされるうちに、反応が鈍くなってきたので、別の方法を試すと言って桜花が引きずって行った。


 最終的に恍……いや、いい。


 桜花に帝国の王子を任せてから、俺は苦痛と屈辱に顔を歪める帝国勇者オルファンと向き合う。


「お前達の国の王子があんな扱いを受けてるのに、何も言わないんだな? 何か無いのか?」


「…っ……あんなカスのことなんて、もうどうでもいいです。 私の出世の為に利用出来るかと思ったら、毎度毎度好き勝手ばかり、まさか他国の村娘を抱きたいが為に兵士を勝手に動かすとは……」


 自身に治癒魔法をかけながら帝国勇者オルファンが立ち上がる。折れた剣を投げ捨て、口元の血を拭う。


 まだ何か切り札や秘策でもあるのだろうか?


 一応さっきのこともある、まさか赤牛頭レッドミノタウロスなんて召喚してくるとは思わなかった。 一応警戒しとくか。


「…お前さえ」


「…?」


「お前等さえ居なければ! 何が異世界から召喚された勇者だ! 大した努力もせず、強い味方に囲まれ、借りものの力で運良く成り上がっただけの異世界人野蛮人が勇者を騙るなど…私が一体どれだけ血のにじ…」


「長い、そういうのいいから」


 一応最後まで聞こうかと思ったが、やっぱり無理だった。

 お前達の事情なんて何の興味もないし。


「貴様は……一体どれだけ私を愚弄するつもりだぁー!」


 台詞を途中で遮られた帝国勇者オルファンは、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「消し炭になれぇ!」


 周りにいる帝国兵が居るにも関わらず、帝国勇者オルファン範囲魔法炎嵐 を唱える。


「オルファン様ぁ?!」


「うわぁぁぁぁー?!」


「あづい! あづい!あづい!たす…」


 灼熱の風が渦巻き、近くにいた帝国兵が悲鳴を上げる。

 幸い桜花は魔法の範囲外に居り、こっちに駆け出そうとしたが、魔法の威力を見て俺なら大丈夫と判断したのか、倒れて動かない帝国の王子に視線を戻した。 ……あれ、まだ生きてるのか…?


「はははは! 死ね! 焼け死ね! はははははっ!」


 帝国兵味方を焼き殺しながら大声で笑う帝国勇者オルファン。 ……もういいか。


「はははは…は? おがっ…?!」


 炎嵐の中から無傷で飛び出してきた俺に殴られ、間抜けな顔で吹っ飛んでいく帝国勇者オルファン


 直ぐに起き上がり信じられないものを見るような目で俺を見る。

 元々あの程度の魔法なら軽い火傷で済むけど、流石に無傷とは…いつの間にか、俺の首に手を回して後ろから抱き付いている……というかぶら下がっているアカネのお陰なんだろうか?


「もういいだろう? 話してもらうぞ、帝国お前達と魔王軍の関係を 」


「ま、ま…待ちなさい!」


「…いい加減に…」


「と、取り引きしましょう。 我々……いや、私を見逃してくれ…ごばぁっ!!」


 …あ、ついふざけたこと言うから思わず殴ってしまった。

 いやでも、このタイミングで取り引きはないだろ…する意味もない、情報は無理矢理にでも聞き出せばいいしな。


「ふざけたことを抜かすな、お前は大人しく聞かれたことにだけ答えろ。 」


「ぎひぃ?!」







 ――――――――――




 ……危なかった、もう少しで帝国勇者オルファンを殴り殺してしまうところだったた。


 コイツと隣で動かない帝国の王子(桜花に身体中の神経を斬られた…らしい)は皇帝の前で処刑してやる。 当然ここにいる帝国兵に帝国勇者オルファンのバックにいる貴族や商人も同罪だ…破滅させてやる。


 桜花にはテント内に居たという少女達の話し相手になってもらっている。 あまり顔を会わせたくないが、レーネ達が来たら任せよう…レーネはせい…聖女だ、教会に保護してもらって、本人の希望があれば元々の居場所に戻れるよう頼もう。






 それはそれとして


 そろそろ離してくれないかなー…(チラリ)


(…や)


 アカネは俺の視線に気づくと首を横に振った。



 ――――――――――


 更新遅くてすいません。


 …好みの小説を見つけて喜んでいたら、最終更新が一年以上前というのが結構多くて辛い















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