イマジナリー幼馴染み…?


 茜……え、なんで?


 今、俺の手を握ってる少女の姿は、間違いなく昔の茜のもの。 そして少女が抱いている犬は昔飼ってた…いや、でも…。


 思考がまとまらない、次々と疑問が生まれてくる。 まだ戦闘中だ、そっちに集中しなければならないのに、どうしても少女から目が離せない。


 帝国勇者オルファンが何かを喚いてる、鬱陶しい、今はそれどころじゃ…


(…悠君)


「っ?! …いまのは?」


 少女が口を少しだけ動かすと、頭の中に直接声が聞こえた。


「…茜…?」


 俺をそう呼ぶのは茜だけ…ならやっぱりこの少女は茜…?


 しかし少女は首を横に振る。


「違う?…なら君は一体?」


(――……)


「無視をするなあぁ! 」


 そして少女が口を開いた瞬間、叫び声と共に帝国勇者オルファンが岩槍を発動させる。 俺の立っている場所へ向けて、地面から無数の岩槍が突き出してくる。

 犬ごと少女を抱き上げて横へ飛んで回避すると、少女を地面に下ろしてから帝国勇者オルファンと距離を………距離……を


「ええと、離してくれる?」


 俺の手を握ったまま、ふるふると首を横に少女。


「えーと…」


 どうしよう、無理矢理振り払うのもな……正直見た目のせいか、この子に勝てる気がしないんだけど。


「貴様ぁ!いい加減にしろよ! さっきから何処を見ている!」


 そんなことを考えてると帝国勇者オルファンが逆ギレしてきて、こっちもいい加減面倒臭い。


 …ん?


 いきなり現れたこの少女に対して、何も言わないのはちょっと違和感があるな。


「…なあ、俺の隣に誰が居るか分かるか?」


「は? 何を訳の分からないことを…気でも狂ったんですか?」


 もしかして…見えてないのか?


「それよりも質問に答えなさい」


「何の話しだ?」


 全然聞いてなかった…。


 帝国勇者オルファンは大きく舌打ちをして


「何処までも馬鹿にして…貴方は知っているんでしょう? あの槍のことを…その剣のどこが聖剣なんですか?」


 その言葉に少女は、むっ…とした顔になる。


 俺は帝国勇者コイツが言っていることについて考えていた。


 何故 帝国勇者コイツがあの呪いの槍のことを知っている?


 何故 帝国勇者コイツはこの聖剣の見た目が、あの槍に似ていることを知っている?


 何故 帝国勇者コイツは魔王軍の使用していた魔導具を所持していた?


 何故 何故 何故 何故 何故 何故


 憎しみと怒りで心が満たされる


 この帝国勇者クソ野郎はまさか魔王軍と密通をしていたのか?


 俺達を召喚して最前線で戦わせ、その世界の人間が俺達を裏切った?


 上等だ、直ぐに殺…――


 その時、俺の手が強く握られる。 思わずそっちを向くと少女が口を開いた。


(まだ、だめ)


 ……そうだ、帝国勇者このゴミには色々と吐いてもらわないと困るんだ。


 それに、ちゃんと沢山沢山苦しんでもらわないと、そしてエルドニア帝国という国そのものもにもちゃんと責任をとってもらわないと…。


 不思議と、少女の言葉(?)を聞くと冷静になれた。少女の抱いているシーズーを見ると、凄い勢いで尻尾を振っていて、少女の体にパシパシ当たってる。


「名前、改めて教えてもらっていい?」


(わたしアカネ このこはコン)


 茜じゃなくてアカネ…?そしてコン?!

 …気になることは色々あるけど…。


「アカネ、コン、待ってて、直ぐ終わらせるから」


 俺の言葉にアカネは頷いて手をゆっくり離した。


「さっきからブツブツと気色悪いんだよ貴様ぁ!」


 そう言って斬りかかってきた、帝国勇者の剣に対して聖剣を当てると、無駄に装飾のついた帝国勇者の剣はあっさりと折れた。


 驚いて目を見開く奴の腕を掴んで引き寄せて、腹に膝蹴りをいれると黒い鎧にヒビがはいる。

 苦悶の表情をうかべる帝国勇者の顔に、拳を叩きこむと折れた歯を撒き散らしながら、地面をバウンドして10メートルほど転がっていった。


 俺がゆっくり近づくと、ボロボロになった帝国勇者は短い悲鳴を上げる。


「お前には色々聞くことがある、ちゃんと嘘偽りなく答えろ、さもないと……」


 魔導具がちゃんと起動してることを確認してから、帝国勇者の髪を掴んで持ち上げた。



 ――――――――――


 バレンタイン用のおまけ話を投稿しようと思います、ツンツンとデレデレにそれぞれ別の話しを…


 ツンツンの方は茜、桜花、桃花、姫にメイドが幼い頃の話しをしてる最中に茜が「じゃあ確かめてみよ?」と、言いながら例の薬を持ち出してくるカオスなやつ。


 デレデレの方は普通にヒロインとチョコレートの話し。


 投稿はバレンタイン当日か前日の予定です。

















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