元勇者は彼女にも相棒にも頭が上がらない


「…そういえば桜花の刀ってアガレスに返したんだっけ?」


 帝国軍が駐屯しているという国境付近の平原を、桜花と会話をしながら歩く。

 桜花を異世界グレセアに連れてきたことをティセニエラに伝えると、是非会いたいと言われたが、桜花はそれをやんわりと断っていた。


「あぁ、持っててくれと言われたがあれはアガレスの国宝だからな。 もう使うこともないと思っていたしな。」


 そう言いながらジトっとした目で見てくる桜花。


「うぐ……悪かったよ…」


「本当に反省しているのか?」


「ああ…本当にすまないと思ってる…」


 …相談しろと言われていたしな。


「まあいい、次は本当に怒るぞ」


 え、今は…?


「…武器はどうする? ショートソードならあるぞ」


 奴等が持っていたものだけど。


「不要だ、これでいい」


 そう言っていつも持ち歩いてる、木刀を軽く持ち上げる。


「そうか」


 確かに桜花相手に鎧や盾はほとんど意味を持たないからな。


「あれか」


 そうこうしてるうちに沢山のテントと馬が見えてきた。



 あれ、結構な大所帯じゃないか?

 テントと馬の数からいって100や200じゃすまない数なんだが…。


 少数精鋭のエリート部隊(笑)なんじゃ?


 ま、100も500も大して変わらないか…今は桜花もいるし。




 俺達が近づくと槍を構えた見張りの兵士が話しかけてくる。


「止まれ、怪しい格好をして…冒険者にも見えん、お前達は何者だ? 」


 他の兵士達も集まってくる、中には桜花に厭らしい視線や言葉を投げてくる者も居た。

 不愉快そうな表情の桜花、俺は桜花の前に立って見張りの兵士と向かい会う。


「俺はフィーリアの勇者ハルト、彼女はアガレスの勇者オウカ。 この部隊の責任者に会いにきた。」


「……は? ゆ、勇者ハルトに勇者オウカってあの…? 」


 そう名乗ると兵士達は明らかに動揺した様子を見せる。


「…え、マジか? あんなガキが?」


「じゃあ、あの変な格好は異世界の服か?」


「異世界に帰ったんじゃないのか?」


「オイ、も、もし本当ならヤバいんじゃないのか、あのこ「チッ、黙ってろっ」」


 ま、後ろめたいことはあるだろう…他国の村を正規軍が襲ったとなれば外交問題だし。

 そうなれば幾らエリート部隊だろうが、コイツ等の処刑だけじゃ済まない。

 この世界じゃ個人情報の保護なんて存在しない、こういう場合は実行犯は処刑されて家族まで報復の対象になる。


 無論帝国内でも関わった貴族は処刑だし、各国から非難され、莫大な賠償金だって発生する…皇族の命だって安全ではないしな。




 さて、どうでるかな?



「少し…お待ち下さい」


 明らかに疑っている感じだが無碍むげにもできないってところか。

 面倒だな、いっそ襲いかかってくればまとめ……


 また桜花にジト目で睨まれた……わ、わかってるよ…。



「お待たせしました、…っ!…お久しぶりですねハルト殿、オウカ殿…本日はどのようなご用で?」


 長い金髪をオールバックにした黒鎧の男が声をかけてきた。コイツがオルファンって奴かな?

 お久しぶりって言ってるし、俺の顔を見て言葉をつまらせたし、やっぱり面識あるんだろうか…


「…ど、どうしました? 私の顔に何か?」


「いや、すまないが何処かで会ったことが?

 全然覚えてなくて… 」


「…は?」


 俺がそう言うとオルファンのまとっていた空気が変わる、分かりやすく言うと怒った。


「私を……覚えていない……? あれだけのことをしといて?」


 あ、これあれだ…俺、コイツにめちゃくちゃ嫌われてるわ。


「あれは貴殿が悪いのであろう、オルファン殿」


 一度宥めようかと思ったら、桜花が油を注いだ、なみなみと…。



 ――――――――――


『お知らせ』 があった場所に糖分補給用のif話を置いときました(消すの忘れてた)


 我慢できない人はどうぞ…






















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