元勇者に感謝の気持ちを伝えたい元勇者


 ぜんかいまでのあらすじ


 これはもしかして勇者親子なのでは…?



「おうか、さっきのやつじゃなくていいのか?」


 俺の質問におうか は茜ととーか をチラっと見てから


「うん わたしはこれでいい」


 俺は屈んでおうか と目線を合わせる。


「遠慮してる?」


 俺の言葉に首を横に振るおうか。


「し…してない」


 目が泳いでる…おうかは嘘が下手だな。


 どうしたものか…桜花はおうか になっても(分かりにくい)俺に気を使ってか、他の二人より甘えてくれないし…もっとこう…グイグイ来てほしい。


 異世界グレセアにいた時からずっと世話になりっぱなしだし、ほんの少しだけでも恩を返したい。


 何とかしておうか の喜ぶ顔がみたい…何か良い案は……



 その時、俺の頭の中に勇者的天啓が降りてきた。『取り敢えず抱き締めて愛を囁けば喜ぶよ』


 黙れ滅ぼすぞ。


 それは茜専用のオプションメニューだ。しかも今の状態だと純度100%の犯罪だよ…。




 ――――――――――――


(ハルト視点)



 ――………少し…寝れたな。


 夜営中のテントの中で目が覚める。


 寝始めてどれくらい時間がたったかわからないけど、外の暗さから余り時間が経過してないことはわかった。


 はあまり眠れない、その分聞こえる日はよく眠れるのだが。


 ……見張りを代わるか。


 そう思いテントの外へ出たが、見張り中の仲間にちゃんと休むように言われた。…眠れないんだがな。




 次の日は見張り当番だったので、交代まで焚き火の側に座り茜のことを考えていた。


 背後に人の気配を感じる、こういう時、話かけてくるのは


「桜花か、どうしたんだ。 眠れないのか?」


「ああ…やはりバレたか。 気配は消したつもりだったんだが。」


 何がしたいんだ…。


 桜花のよくわからない行動に、非難の視線を向ける。


「――……ふふ、ようやく此方を見たな。 人と話す時はちゃんと相手の顔を見ろと言ってるだろう。」


「そんなことを言うためにわざわざ?」


「違う違う、そう怒るな悠人。」


 桜花にしては珍しい、おどけた態度で否定する。


「……何を、考えていたんだ?」


 俺の斜め後ろに座りながら、小さな声で話す桜花。 それはまるで、聞いてはいけないことを聞くかのような……。


「何時も通りだ、茜のことを考えていた。」


 物心ついた時からの、覚えている茜との思い出を全て…


 嬉しいことがあったら、一緒に喜んでくれて。


 悲しいことがあったら、一緒に泣いてくれて。


 嫌なことがあったら、一緒に怒ってくれて。


 俺はそんな彼女を一度捨てようとした。『あの時』の弱々しくて、今にも崩れそうな茜の顔を思い出す度に自分自身が許せなくなる。



『悠君…』



 ……


 あの日から時折聞こえる茜の声、ただの気のせいかもしれない、ただの幻聴なのかもしれない。 でもどちらでもいい、この声が聞こえる限り…俺はきっと正気でいられる。


「悠人。」


 突然桜花に声をかけられる。


「…どうした?」


「…いや、何でもない。」


「そうか。」


 桜花は「ああ。」…と短く返事をした。


 少しの間の沈黙。

 焚き火の音だけがその場に響く。


 桜花とのこういう時間は珍しくはない、むしろ最近はよくある。


 俺はこの時間が嫌いじゃない。


 一定の距離を置きながら、決して離れることがない桜花の気遣いは嬉しくもあり、寂しくもある。


 いつかこの恩を返すことはできるだろうか…。



 ―――――――――――


 ……よし、決めた。


「茜、とーか、あっちにある食玩も好きなのを一つづつ持っておいで。」


「え…はると?」


 俺の言葉にびっくりした顔になるおうか。


 おうか は二人にも遠慮してる気がする。自分だけ、少し高い食玩にするのが、気が引けるのなら二人にも買えばいい。


 予定外の出費だし、ここのお金はちゃんと俺の財布からだそう。


「…うん わかった!」


「はい!」


 少し俺の顔を見た後、察したのか乗ってくれる茜。 流石、昔からやたら察しが良かったからな。


 とーかも…まあ、多分…うん。


「…うー……」


 二人が食玩を選んでるのを見て、心が揺れてるおうか。 よし、あと一押し。


「おうか はこの後、荷物を持つの手伝ってくれるんだよな?」


「うん」


 もちろんだと言わんばかりに頷くおうか。


「二人も荷物持ちを手伝ってくれるんだって、だから三人には報酬が必要なんだ。」


 おうかの頭を撫でる。


「おうか も”ありがとう”を人に伝えたい時があるだろ? 俺は今がその時なんだ、だからおうか が俺の”ありがとう”を受け取ってくれないのは寂しい。」


「……いいの?」


「ああ、勿論だ」


「……うん。」


 おうか は頷いてから、二人と一緒に食玩を選びにいった。


 茜達が仲良く、食玩を選んでる姿を眺めながら俺はこう思った。




 尊い、写真に残したい。



 ――――――――――


 次は多分、ただのカオス回


 そろそろキャラクター紹介とか必要かな












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